最近の若者で、水上氏が感じるのが「日本産もカッコいいという意識」だ。「40代以上の世代にあった欧米への憧れ」が若者には薄いと感じているという。
「例えば、『三ツ矢サイダー 無駄にカッコよく撮る選手権』というのがSNS上で行われ、盛り上がっていました。人気インスタグラマーの福山あさき(あさ姉)さん(1995年生まれ)が始めた活動のようで、太陽の光に三ツ矢サイダーをかざして撮ったりしてくれました。メーカー側が関与したのではなく、こうした動きは以前にはなかったものです」
首位のコカ・コーラ(米国発)を追う炭酸ブランドとして、可能性も感じられる話だ。
難敵の“長雨”に加え、高齢者のニーズ調査も課題
一方で課題もある。実は、7月の三ツ矢の販売数量は対前年比63%と記録的な低さだった。同社の誇る主要ブランドのうち「カルピス」(乳性飲料)や「十六茶」(茶系飲料)も同水準。主な理由は梅雨明けが遅れ、天候不順が続いたこと。例えば大消費地の東京都では、都心で7月16日まで「20日連続・日照時間3時間未満」を記録したほどだった。
そんな状況でも、炭酸水のウィルキンソンは、7月も対前年比104%を記録し、三ツ矢と明暗を分けた。ブランドの勢いの違いだろうか。
年代別では、高齢者の取り込みも課題だ。「現在の年配者は10年前の同世代とは違う」「シニア向けなどの訴求は好まない」ことは同社も承知するが、「70代の消費者調査は不十分」なことは認めている。愛用者を広げるカギは「年齢訴求よりも興味・関心訴求」だろう。
“国民的炭酸飲料”ゆえ、長年のユーザーを裏切らないよう、基本を押さえつつ、「時代に遅れない」モノづくりとコトづくりを深めるのがまっとうな手段。社内に「無糖」と「有糖」のメガブランドがあり、ほとんど「カニバリ(共食い)」しないのも強みだ。
まずは7月の不振を巻き返し、梅雨明け後の「猛暑の波」に乗ることができたのか。今後も取り組みを見続けたい。