圧倒的“無糖”ブームの中、甘さ控えめに挑戦

清涼飲料市場は「5兆2000億円弱」(富士経済調査のデータ数値)といわれる巨大市場だが、茶系、果実系、野菜系、コーヒー系、炭酸系などカテゴリーも幅広く、競合も多い。

カテゴリーの浮き沈みもある。戦後の高度成長期以降は、例えば「コーラ」「缶コーヒー」「ウーロン茶」「紅茶」「緑茶」などが伸びたり、落ち込んだりした。最近は茶系飲料(同調査で1兆円超)の中でも「ウーロン茶」や「紅茶」が落ち込み、「緑茶」(日本茶)が好調、「麦茶」も手堅く消費者ニーズをつかんでいる。

「特に1980年代後半から健康意識が高まり、『炭酸飲料は身体によくない』という風潮も出ました。三ツ矢ブランドが低迷したのは、もう少し後で2001年から2003年ごろ。ブランドの定義もあいまいとなっており、価値の再整理を行い、訴求を見直したのです」(水上氏)

立場上、同じ炭酸系の「ウィルキンソン」(無糖の炭酸水)も見る水上氏は、「時代のトレンドは圧倒的に無糖で、ウィルキンソンの販売数量は10年で約13倍になりました。有糖の三ツ矢は、甘さ控えめなどの“中間領域”にもチャレンジしています」と話す。

中間領域の成果が、冒頭で紹介した「三ツ矢レモネード」だ。「30代と40代の女性をターゲットに、レモン特有の爽やかな酸味と、ほのかな苦みを楽しめる飲料」として発売した。

ちなみに「健康に気をつかう」消費者意識は、かなり昔からあった。カゴメは「お酒を飲んだ翌朝は、カゴメトマトジュース」というCMで訴求していたこともある。「自分への罪悪感」で機能性商品を買うのは、近年の「トクホ(特定保健用食品)飲料」にも通じる。時代とともに、より意識が深まったといえそうだ。

「日本産もカッコいい」が生んだSNSの選手権

再び「100年ブランド」の視点に戻り、なぜ消費者に支持され続けたのかを聞いてみた。

「例えば世界で100年以上続く老舗企業の8割が日本企業といわれるように、日本人は『いいものを長く愛する』気質がある。三ツ矢サイダーが支持されてきたことに通じます。一方、『ブランドは顧客と一緒に年をとる』とも言われます。三ツ矢ブランドも同様で、商品を磨き続けながら、飽きられない工夫を続けるしか道はありません」(水上氏)

ブランドの基本である「誠実」にこだわる一方で、毎年「戦略的に消費者ターゲットをずらす」こともする。また単に年齢区分だけでなく、ニーズベースで7つのクラスター(母集団)を設け、優先順位をつけつつ訴求するそうだ。