児童相談所だけが虐待対応をするのではない
次に、地域資源を活用して結び付ける連携力の向上が求められる。
具体的には、平成28年児童福祉法改正により導入され、2022年度までに全市区町村で設置が求められている「子ども家庭総合支援拠点」の設置を進めること。そして、この拠点が司令塔となって、地域のネットワーク組織である要保護児童対策地域協議会(子どもに係る庁内組織、保健所、学校、保育園、里親、養護施設、地域のNPO、民生・児童委員、医療機関、児童相談所、弁護士、警察等)を活用(役割分担と連携)しつつ、子どもの命を守っていくことが必要だ。
児童虐待対応というと児童相談所ばかりが注目されバッシングを受けるが、地域資源を「面」でつなげ、切れ目のない支援を行っている市区町村と、「点」的介入が中心とならざるを得なくなっている都道府県児童相談所との間の、支援と介入との役割分担、連携の制度設計・運用の徹底的な詰めの協議と見直しが必要だ。厚生労働省の平成30年度「子ども・子育て支援推進調査研究事業」で、子ども家庭総合支援拠点のスタートアップマニュアルを公開しているので参照してほしい。
一人ひとりが子どもの命を守る当事者
最後に、地域全体、そして一人ひとりが子どもの命を守る当事者であるという意識の広がりが、子どもの命を救うことになると提言しておきたい。電車やバス等の公共機関で子どもが泣いている場面に直面したら優しい声かけができるだろうか。子どもを叱っている保護者に出会ったらその場を和らげる声かけができるであろうか。私は極力話しかけている。
ほっとした保護者の顔や声を聞くたびに、こうしたおせっかいが広がることが最大の予防と対策であることを確信する。それは児童福祉司を一人増員することよりも実は大きな虐待予防であると思う。みんなで子どもと養育者に優しい社会を創っていきませんか。