専門の国家資格を創設すべきだ

令和元年の法改正附則で、施行後1年をめどに政府が検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる項目として、「児童福祉の専門知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策について」が挙げられており、9月からワーキンググループによる議論が始まる。

私は、子ども家庭福祉の基礎自治体側実務担当者としての経験、および、多くの児童相談所を研究者としてヒアリングしてきた経験から、「子ども家庭福祉士」といった専門の国家資格を創設すべきだと考えている。児童福祉司の仕事は子ども対応だけではない。子どもを守るために、親対応を含めた家族全体の見立て力が求められ、かつ、子どもに関係するあらゆる機関をつなぎ、迅速に調整し、具体的な連携を行っていく高度なソーシャルワーク力が求められる。

その要となる児童福祉司のレベルが高低バラバラでは子どもの命は救えない。現行の児童福祉司任用資格については、児童福祉法13条3項に要件が定められている。だが、どの要件を満たして児童福祉司となっているのかは、児童相談所によって大きな差が生じている。

これは、当事者側からすればどう見えるのであろうか。例えば、保育園に子どもを預ける保護者または保育に係る関係機関は、保育園では最低限子どもの発育や発達を理解している専門職(保育士)が子どもを見てくれていると通常考えている。法律相談をする人は弁護士資格を有している人に、病気になったら医師資格を有している人に、その専門職としての信頼をもとに依頼をしたり、関係性を構築したりしているのではないか。同じことは児童相談所にも求められる。

同じ職場で働く者同士もそうであろう。同じ職場に配属される職員が最低限どのような知識をもっていて配属されているのかの指標がなければ、チームでの役割分担はできない。目の前の子どもを守るための虐待対応を行いつつ、同僚の知識レベルを一から確認し、指導しながら子どもに向き合うのでは、一刻を争う現場において、チームでの円滑な職務遂行は難しいのである。

子どもの命を守るためには専門家が必要

この主張には、次のような反論がなされている。①このような国家資格制度を導入することは、ただでさえ人員が不足している中で、さらにハードルを上げる提言であり現実的でない、②こうした人材育成には時間がかかりすぎる、③既存の社会福祉士制度の活用で十分であり屋上屋になる、というものだ。

しかし、主役は子どもたちであり、子どもの命を守るための最適解を考えるのであれば、国家資格化を否定する説得的な理由は見当たらない。夜泣きや離乳食の相談から発育・発達の相談、DVや性被害等の相談を含めて、虐待ケース対応ができる専門家に向き合ってほしいと当事者が思うのは当然であろう。

もちろん、私は、これまでの児童福祉司制度を完全に否定しているのではない。また、新しい国家資格制度を作るにしても、これまでの子どもに関する専門資格である保育士や社会福祉士、精神保健福祉士、看護師、保健師、医師等の知見と重複する部分は多くある。新たな資格制度を構築する場面では、これまでの児童福祉司制度の利点と欠点について十分な議論が積み重ねられる必要があろう。