「対応件数が増えたら人員を増やす」ができないのか

ではどうすればよいのか。確かに、令和元年の一部改正法では児童福祉司の数の基準がより明確にされた(※2)。だが、私は、この改正法をもう一歩進め、日々変わる相談件数や年度途中での職員の休職・休業等も配慮事情に入れた上で、一人当たりの対応件数に上限を設け、上限を超えた場合には職員を強制的に追加配置することを義務付ける、さらなる強力な法改正を提言したい。なお、指導教育担当児童福祉司の数についても同様に考えるべきであろう。

(※2)人口や相談件数等を勘案した国の政令基準を標準として都道府県が定める。指導教育担当児童福祉司の数については国の政令基準を参酌して都道府県が定める。

例えば、児童福祉司一人あたり30件等以上のケース割当となる時点で、児童福祉司配置を一人追加するといった内容だ。子どもの命を守ることは国家の最優先事項であり、上限規制の法定化による予算の継続的担保が必要であろう(※3)

(※3)規定の仕方としては、標準とすべき基準ではなく、従うべき基準とするとの定め方もある。なお、担当職員のメンタルヘルスケアについても、他の職務よりも短期かつ定期的に行うことを管理者に課し、職員の健康を守っていくことを同時に義務付けることも大切である。日々生命にかかわる仕事の重みを理解する必要があろう。

増員した職員の「質の担保」が課題

増員策が担保されたとしても、それで胸をなでおろすわけにはいかない。人員増とともに、否、それ以上に今現場で急務となっているのは、増員した児童福祉司等の質の担保である。

この点、新プランでは、児童相談所配属経験者の再配置、児童相談所OB職員再任用等を積極的に行うこととしている。また、令和元年の一部改正法でも、スーパーバイザーや専門職員の配置強化による資質向上や児童相談体制向上策が定められている。

だが、現場からは、「児童福祉経験の浅い職員や新任職員配置で人数を充足せざるを得ない」、「もともと経験年数が浅い職員が多い職場に、大量の新人職員が配属されて職場全体の質の低下に悩む」、「教育指導に時間と労力がとられ、自分のケースワークができない」といった、悲鳴に近い声が寄せられている。