クラシック音楽ファンの「オタク化」が進みすぎた
クラウドファンディングが実現するのは「資金を集めること」だけではない。寄付金額によって、定期演奏会やリハーサル見学への招待を受けることもできるこの仕組みは、コアなクラシックファン以外の層に開かれたコミュニティーをつくっていくことにもつながる。
「かねがね、クラシック音楽ファンの『オタク化』が進み、特殊な世界になりすぎてしまっていることは日本の課題だと感じています。洋服を買ったり、食事をしたりするに当たっては、一人ひとりがコストパフォーマンスを計算して、自分なりの『好き嫌い』の判断軸を持って選ぶことが定着していますよね。それなのに、クラシック音楽と言ったとたん、知識の有無や評論家の批評を気にしてしまう空気がある。その純粋に楽しめない『ぎこちなさ』は、おそらく音楽と生活の距離が離れすぎてしまったところからきていると思うんです」
多くの人々に活動を認識してもらい、応援してもらう。そして心を震わせるものとして、音楽を「体感」できる環境を取り戻す。今回の挑戦を「オーケストラの活動を楽しみにしてくれるファンを増やすための光とすることができたら」と大友氏は語る。