感情的に反発しているだけではないのか

読売新聞の社説ほどではないが、同じ保守の産経社説も時に安倍政権寄りに偏ることがある。読者あっての新聞だ。政府のためにあるのではない。担当の論説委員には新聞の公器性を自覚してほしいと思う。

産経社説は「感情的に反発しているだけではないのか。GSOMIAを一方的に破棄するようでは、日本は、韓国に対する安全保障上の懸念をさらに募らせるだけである」とも訴えているが、これには同感である。

北朝鮮の軍事的な脅威は何も変わっていない

次に8月24日付の朝日新聞の社説を見てみよう。冒頭部分で「今回、その協定の維持は『国益に合わない』と判断したという。だが現実には、破棄こそが国益を損ねるのは明らかだ」と書くが、朝日社説が「国益」という言葉を持ち出して韓国を批判しているところがおもしろい。

どちらかと言えば、朝日社説は韓国の肩を持って安倍政権を批判することが多かった。それが今回は違う。それだけGSOMIAの破棄にインパクトがあったわけだ。朝日社説は続けてこう指摘する。

「文在寅大統領は北朝鮮との融和をめざしている。その平和的な努力は評価できるが、希望と現実を混同してはならない。南北間や米朝間の首脳対話が実現しても、北朝鮮の軍事的な脅威は何も変わっていないのだ」

「希望と現実の混同」「南北間や米朝間の首脳対話」「北朝鮮の脅威」と並んだ言葉を見ても朝日社説の韓国批判は強いことが分かる。

「脅威に立ち向かううえで最も肝要なのは、米韓日の結束であり、3国政府はそのための調整を長年重ねてきた。今回の日韓協定もその財産の一つであり、両国の防衛当局がこれまで双方に有益だと認めてきた」

「脅威に立ち向かう」「米韓日の結束」「日韓協定もその財産」といった表現は産経や読売が好んで社説に使う言葉である。朝日社説は韓国に対する見方やスタンスを変えつつあるのかもしれない。