昨日買った株式が、今日同じ額で売れるか
私が市場を見るとき、大きなキーポイントにしているのは「流動性」です。流動性とは、投資家が売買したいと思ったときにスムーズに行える状況にあるかどうかです。たとえば昨日100円で買った株式が、今日は同じ価格で売れないというのはよくあることで、そうなると95円、90円へとディスカウントしなければなりません。それでも買い手がつけばまだいいほうで、銘柄によっては、東証1部でも売買が毎日成立しないものが結構あります。
流動性が高い銘柄では、昨日100円で売買されていたものを、今日も明日も100円で時間をかけずに売却できます。つまり、注文を出してからすぐに売買が成立する「即時性」と「価格の安定性」。この2つが流動性を考えるときの非常に重要な要件です。機関投資家の場合、これにもう1つ「取引できる量に対する制約がないこと」という要件が加わります。
流動性を高めるにはまず、発行済み株式数、株主数の規模が一定以上なければなりません。次に、ディスクロージャーがきちんとなされていることが重要です。そして、投資家が「本当は悪い材料を隠しているのではないか」と疑心暗鬼にならないよう、コーポレート・ガバナンスがしっかり機能している必要があります。企業の透明性が高いほど、流動性は高まります。そして流動性が高まれば、売買に関わるコストが下がり、結果、株価は上がって、企業価値も高まることが期待できます。
流動性の観点から見ると、日本の市場が欧米に比べて劣っているということはありません。しかし近年、香港やシンガポール、オーストラリアなど、アジアのほかの市場に追いつかれてきています。適切な再編によって、市場が活性化することが期待されます。
(構成=小澤啓司)