インバウンド・ビジネスをさらに成長させるには
観光などで日本を訪れる外国人が増えています。2019年1月のJNTO(日本政府観光局)の発表によれば、18年の年間訪日外国人客数は前年比8.7%増の3119万2000人で、JNTOが統計を取り始めた1964年以降で最多です。今後、20年の東京オリンピック・パラリンピックや25年の日本万国博覧会などの巨大イベントが予定されるなか、「インバウンド(訪日外国人旅行)」に対する期待はますます高まっています。
海外からの需要を取り込むインバウンド・ビジネスは、これからの日本の数少ない“収益の見込める成長産業”の1つです。しかし、訪日外国人客数を今のやり方の延長線上で増やしていくことによって、日本の未来を持続的に豊かにしていけるでしょうか?
インバウンド・ビジネスを日本の成長・収益産業にするためには、マス層と富裕層の両分野で既存のパラダイムを変える必要があります。ツーリズムを例に考えてみましょう。
まず、マス層向けの課題です。図は、サービスレベルと価格のイメージを表したものです。欧米圏や一部のアジア圏では、茶色の線で表されているように低レベルのサービスは価格も安く、高レベルのサービスは価格も高くなるのが普通です。一方、日本では「よいもの・サービスをより安く」という経営の価値観が浸透し、青線で表されているように高レベルのサービスでも比較的安い価格で提供されています。