「世界の航空産業の中核都市」というコンセプト

そこで、当初はホテルやレジャーなどの魅力的な施設を充実させますが、それだけではインバウンドはなかなか増えませんでした。人の流れを活性化させることの必要性に気づいたドバイは、トップダウンで「世界の航空産業の中核都市」というコンセプトを打ち出します。具体的には、多岐にわたる航空機修理をワンストップで包括的に提供する戦略を採り、そのためのトレーニング施設やスペアパーツの保管センターなどを設けて、航空関連大手企業の整備本社拠点を呼び込みました。

さらに、最速で移動できるVIPターミナルをつくったり、故障機や中古飛行機のオークションを開催したりするなど、航空ビジネスにまつわる人・組織を上流から囲い込みました。その結果、マス層も増加し、世界一の観光収入都市になったのです。

ドバイのケースからわかるのは、観光資源に恵まれた日本には、まだまだ高付加価値化と成長の余地があるということです。また、ドバイでは外国人を活用しながら一定以上の品質のサービスを提供し、観光立国を実現しています。日本の事業者は「日本人でなければよいサービスはできない」と思いがちですが、そうした従来の見方を改め、外国人の活用も視野に入れた、持続可能なインバウンド・ビジネスを志向すべきでしょう。

(構成=増田忠英 写真=時事)
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