「労働時間だけ減らすのは無理」という現場の声

働き方改革関連法が2019年4月1日から施行され、約半年が経ちました。働き方改革の目的のひとつは、長時間労働の是正です。残業を減らすことは、いまや産業界全体の共通課題です。一方で「業務量が以前と同じなのに、労働時間だけ減らすのは無理」という現場の声も聞かれます。そこで不可欠なのが生産性の向上です。

長時間労働の抑制は、喫緊の課題だ。(PIXTA=写真)

国際比較では、長きにわたって、日本の時間当たりの生産性の低さが指摘されてきました。過去40年、G7のなかで日本は最下位。米国の約60%の状態が25年近く続いています。

日本の時間当たりの労働生産性の低さは、長時間労働をしているにもかかわらず、多くは生産できていないということを意味します。OECDの国際比較では、週50時間以上働く人は、ドイツが約5%、米国が約12%、英国約13%に対して、日本は約22%もいます。

1日11時間以上の長時間労働はうつ病発症リスク

この「週50時間以上の労働時間」は、キーワードのひとつです。

日本人のホワイトカラー約2000人を追跡調査した我々の研究結果からは、メンタルのタフさや性格の違いといった個体差を除いたうえでも、労働時間が週50時間を超えるあたりから、次第にメンタルヘルスが悪化する傾向が認められました。

別の英国の調査でも、1日11時間以上あるいは週当たり55時間以上の長時間労働は、5、6年後の大うつ病発症リスクを高めるといった研究もあります。また、脳疾患・心臓疾患の発症リスクも長時間労働と関連しているという研究も蓄積されてきています。