「どこで働くか」よりも「どこで誰と働くか」が重要

長時間労働社会の日本から、ワークライフバランスのとれた欧州の事業所に海外赴任した会社員約400人を調査し、赴任前後の労働時間を調べたところ、日本で週60時間以上働いていた人の多くが、欧州に赴任すると労働時間が大幅に短くなっていることがわかりました。

また、日本で休暇をほとんど取っていなかった人が、赴任後に長期の有給休暇を取得するといった事例もみられました。これは、残業が常態化した職場から残業がない職場への環境変化が、人々の労働供給行動にも大きく影響したことを示唆しています。

興味深いことに、欧州に赴任した人でも、日本本社との連絡や調整が現地での主業務だった人は、労働時間も有休休暇もほぼ変化がありませんでした。つまり、どこで働くかよりも、どういう職場環境で誰と働くかが、個々人の労働時間の決定に影響するのです。

法改正をきっかけに職場の規範が少しずつ変化

これは、職場の上司や周りの同僚の働き方が、個人に影響を与える「ピア(仲間)効果」が存在することを示唆しています。今般の法改正も、時間外労働の上限規制によりいったん職場の働き方を強制的に変え、それをきっかけに、働き方に関する職場の規範が少しずつ変化することが期待されています。

法改正に先駆けて、すでに多くの企業では長時間労働の是正に取り組んできています。統計でみても、週当たり60時間超の超長時間労働者比率はこの数年間で少しずつ減少傾向にあります。現状はまだ道半ばではありますが、こうした取り組みを続けていくことで、最終的には「個々人のライフスタイルに合った働き方」が認められる社会に変化していくことが望まれます。