“億り人”には会社員も多い
日本は働いている人の多くは雇用者、つまり俗に言う会社員です。総務省統計局が発表している「労働力調査」によれば、2019年5月の時点で就業者の数は6,732万人ですが、この内、雇用者の数は5,993万人となっているので、働く人の約9割は会社員と言っていいでしょう。会社員という言い方には、「平凡な」とか「しがない」といった枕言葉がつくことが多く、会社で働くビジネスウーマンにとってはあまり呼ばれたくない呼称かもしれませんが、今回のテーマは広く会社で雇用されて働いている人が前提となるため、本稿での言い方も会社員で統一させていただくことをお許しください。
その会社員の多くは、「我々は所詮、会社員で決まった給料しか貰えないのだからお金持ちになれるわけがない」と思っています。ところがこの考えは正しいのでしょうか? 私は長年にわたって証券会社で投資相談の仕事をしてきましたので、金融資産を億単位で持つ人々、最近流行りの言葉で言えば“億り人”をたくさん見てきました。そしてそれらの人の中には意外と会社員が多いのです。
資産づくりの大原則とは
今から20年ほど前にアメリカで出版された「となりの億万長者(原題:The Millionaire next door)」という本があります。この本は純金融資産(持っているお金から借金を引いたもの)が百万ドル以上ある人達の考え方や生活習慣等を調査した、なかなか興味深い本です。この本によれば、億万長者と言われている人達は決して華やかな暮らしをしているわけではなく、とても地味で質素な暮らしをしていると言います。着飾って高級外車で毎夜パーティーに出かけるような生活をしている人は意外とお金は持っておらず、どこにでもいる普通の人が億万長者だったりするということが書かれていますが、この事実は数多くのお金持ちを見てきた私の感覚とも一致します。
この本にも出てきますが、資産作りの大原則は「入ってくる以上に使わない」という、ごくシンプルなことです。そのためには、まず何よりも「入」と「出」がどれぐらいあるか?ということが正確に把握できなければなりません。