給与天引きは最強の資産形成術

では一体どうすればいいのでしょう? 会社員ならではの対策が二つあります。まずひとつは給与天引きをフルに活用することです。実は給与天引きには不思議な効果があります。それは行動経済学で「メンタルアカウンティング=心の会計」といって、同じようにお金を動かしても心の中で勝手に仕訳される不思議な心理のことです。

最初から一定額を天引きし、残ったお金で生活するようにすれば、知らず知らずのうちにお金は貯まっていきます。一定額を強制的に天引きすることで、最初は少し生活が窮屈に感じてもすぐに慣れてくるのです。なぜなら天引きで引かれてしまったものは最初から「無かったもの」と認識されるからです。そうすれば天引きされた後の残りのお金はどんなに無駄遣いしても大丈夫です。もし会社に給与天引きで貯蓄をする仕組みがなければ、銀行からの自動引き落としでもかまいません。

社内制度で貯めたお金は残る

次に、「会社の制度を利用すること」です。以前、このコラムで「会社の制度を利用することのメリット」について取り上げました。その時に、会社の制度というのはお得だと言いましたが、実はそれだけではなく、心理的にも資産形成には有意なのです。その理由は社内制度というのが「始めるのは簡単だけど、引き出すのは面倒」ということが多いからです。

一般的に社内制度で貯められたお金は銀行のATMで簡単に引き出すようなわけにはいかないことが多いでしょう。社内的に書類を出したり、場合によっては上司の印鑑をもらったりしなければならないこともあります。この面倒さや、上司にハンコをもらいに行った時によけいなひと言を言われるくらいなら使うのは我慢しようと考えたり、別のお金を使おうという気持ちになったりしがちです。結果として社内制度で貯めたお金は“残る”のです。

実際に会社員で多くの金融資産を作った人を見てみると、そのほとんどは、何か特別なことをしているわけではなく、こうした給与天引きによる制度を長年に亘って地味に実行してきた人達であることがわかります。あらためてお金を貯めるというのは相当な決心が必要です。だとすれば「会社の制度」を「天引きで」利用することは心理的な要因を逆に利用することで手間をかけずにお金が残っていくことになるのです。

ビジネスウーマンがタレントよりもお金持ちになれる秘訣、それはごく身近なところにヒントがあると言っていいでしょう。

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