「無意識の思い込み」にとらわれていないか

『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』
守屋智敬『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』(かんき出版)

ここからは今月の注目作をピックアップします。7位の『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』は、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見、根拠のない思い込み)に気づき、対処する方法を解説する本です。良かれと思ってした判断や言動でも、そこに無意識の「思い込み」が潜んでいることはよくあります。「自分は思い込みにとらわれていない」と思っている人ほど、「自分からは見えていない面があるのではないか」と自省する必要があることを、本書は気づかせてくれました。

「ティール組織」や「心理的安全性」などのキーワードの流行に見られるように、組織において、一人ひとりの可能性を最大化させる方法を考えることが、ひとつの潮流となってきています。一人ひとりの「内面」を理解し、それを踏まえたうえでどう行動するかが、これからの重要な戦略になると予感させてくれる一冊です。

不適切なイノベーションは害悪になる

『繁栄のパラドクス』
クレイトン・M・クリステンセン/エフォサ・オジョモ/カレン・ディロン著、依田光江訳『繁栄のパラドクス』(ハーパーコリンズ・ジャパン)

11位の『繁栄のパラドクス』は、「破壊的イノベーション」の提唱者であるクレイトン・M・クリステンセン氏の最新作です。クリステンセン氏は、イノベーション研究の大家として知られています。

本書がユニークなのは「イノベーションのかたちは3種類ある」としているところ。その場面に適したタイプのイノベーションでなければ、むしろ害悪になりかねないといいます。イノベーションの重要性がしきりに叫ばれる昨今だからこそ、その中身にしっかりと目を向けるべきというのは、かなりの納得感をもって理解できるのではないでしょうか。

本書では過去の日本も含め、“発展途上国”とされる国々がケーススタディで数多く登場しますが、“先進国”となった日本も、現在では「イノベーションがうまくいっていない」という問題を抱えています。日本が再び繁栄を手にするためにはどうすればいいのか、ぜひクリステンセン氏の言葉に耳を傾けてみてください。