どうして麺だったの?

【田原】どうして麺だったの? 主食といえば米もパンもある。

【橋本】単純に、僕がパスタ好きで日常的に食べていたことが大きいですね。お米も好きですが、自分で炊くのはちょっと大変なので。一方、パンは賞味期限が短くて、技術的に難しい。いまはパンもやっていますが、最初はインターネットでの販売が簡単なパスタかなと。

【田原】試作を1つ作るのに、どれくらいかかりました?

【橋本】買い物を含めると3~4時間です。当時は会社に勤めながら土日を利用して作っていました。じつはやり始めたときは、できないと思っていたんです。アイデアとしては誰でも思いつくものなのに、まだ世にないということは、もともと無理なのだろうと。でも、好奇心で試作していくうちに、退職して本気でやれば作れそうな手ごたえが出てきた。当時はDeNAの自動運転チームが20人くらいに増えていて、僕が1人抜けても前に進むくらいに勢いがついていました。そこで退職して起業することにしました。

【田原】上司は賛成してくれた?

【橋本】最初は「IT企業出身の人間が麺を作って起業するのは、リスクが高いんじゃないの?」と反対されましたが、それでもやりたいと言うと、「ダメだったら戻ってこい」と快く送り出してくれました。

【田原】栄養食品一本に集中できる環境になって、何から始めましたか?

【橋本】しばらく1人で麺を作り続けました。満足いくものができるまで、100回は作ったかな。最初は茹でたらドロドロになって麺じゃなくなるレベルだったし、何よりまずかった。煮干しとココアと大麦若葉とかを混ぜたりするので、めちゃくちゃまずいんです。最初はビタミンが一番豊富な食材、ミネラルが一番豊富な食材というようにオールスターで組み合わせるから、スター選手ばかりでバランスが悪いサッカーチームみたいになってしまって(笑)。

【田原】おいしいものができた後は?

【橋本】特殊な麺を得意にしている岐阜の製麺所をインターネットで見つけて、まず1000食作りました。資金は自分の貯金と、政策金融公庫からの融資で賄いました。

【田原】作った後は売らなきゃならない。どう売りましたか。

【橋本】最初はアマゾンで売りました。知ってもらうためにやったのがクラウドファンディング。ありがたいことに友達がSNSで拡散してくれて、約200人の方が参加してくれました。本格的に売れ始めたのは、17年2月に三軒茶屋のイタリアンレストランで試食イベントをしてから。それがニュースになって、1週間に3000食ペースで売れ始め、アマゾンの食品ランキングで1位になりました。ちなみにいまは自社のホームページで販売しています。