主食を食べるだけで健康でいられたらおもしろい

【橋本】健康になるには、食事と睡眠と運動が大切です。僕の場合、このうち運動についてはジムで走っていたし、睡眠時間も十分にあった。でも、食生活だけは簡単なもので済ませることが多く、健康的とはいえなかった。まわりを見ても、若者はパンやラーメン、カレーライスで済ませていたり、高齢者もインスタント食品で済ませたりしている人がいました。忙しかったり面倒だったりすると、主食だけになってしまうんですよね。そういう状況を見て、主食を食べるだけで健康でいられたらおもしろいなと思ったんです。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

【田原】つまりラーメンやカレーを食べたら、健康に必要な栄養は全部取れるというコンセプトですね。

【橋本】ピーマンが嫌いな子どもに食べさせたいときに、細かく刻んでカレーに入れたりしますよね。それと同じで、パスタやパンに入れ込み、かつおいしいものが作れれば、簡単にバランスのいい食生活ができます。

【田原】「簡単」というけれど、僕は簡単な食事は苦手で、できるだけ人と一緒に食事をするようにしています。そのほうが楽しいよ。

【橋本】僕も人と食事をするのは好きです。ただ、忙しくて簡単な食事しか取れない人も多いし、僕自身、友達と焼き肉やイタリアンに行くのは週に1~2回。普段は簡単な食事が多くて、そこで健康的な食事ができていないと、焼き肉屋さんでも「カルビを食べたいけど、脂っぽいからロースにしよう」となってしまう。人との食事を楽しみたいからこそ、普段の簡単な食事が健康であればいいなと。

【田原】栄養食品をやろうと思いついて、最初は何から始めましたか?

【橋本】試作です。まず栄養士さんに相談して、人が健康でいるために必要な栄養について教えてもらいました。WHOの基準を日本人に合わせて調整した食事摂取基準という基準があって、それに基づいて約30種類の栄養素を入れることにしました。

【田原】栄養はどうするんですか。サプリメントなんかを入れるの?

【橋本】いえ、スーパーで乾燥食品を買ってきて、粉にして混ぜました。たとえば昆布10グラムにはヨウ素が何グラム、大豆10グラムにはタンパク質が何グラム含まれているというデータがあるので、それらを組み合わせて30種類を網羅するんです。

【田原】混ぜるって、何に混ぜる?

【橋本】最初はパスタの生地でした。生地の粉に混ぜて伸ばして、パスタマシンでパスタにして試食する。蕎麦打ち職人みたいな感じです。