小売再生はたった1人の情熱から始まる

<キーワード6>体験企業 Experience Company すべての企業は「体験企業」になる

スティーブンス氏の主張は以下の一言に集約されると言っても過言ではない。

「これからはすべての企業が“体験企業”になる」

ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売再生 リアル店舗はメディアになる』(プレジデント社)

ただしここで言う体験とは店舗体験のみならず、顧客がその商品や店舗に接する体験すべてを指す。企業が顧客に提供する価値はモノ自体ではなく、そのモノを通して得られる体験だからだ。

たとえ店舗を持っていない企業でも、顧客に何かしらの価値を提供している以上は常に「体験」への評価からは逃れられない。データやコミュニティはすべて魅力的な体験を創出するための手段であり、どの企業も顧客に提供したい体験価値から逆算して施策を考える必要がある。

つまり体験は店舗に限った話ではなく、商品やサービスを認知してから実際に使用し、ブランドから離れていくまでの間、すべての行為がスムーズに行えるように設計する必要があるということだ。そして「理想的な体験は常にたった1人の情熱から始まる」とスティーブンス氏が語ったように、顧客に提供する体験価値を考え抜く1人の情熱こそが小売再生の鍵となるのだ。

最所 あさみ(さいしょ・あさみ)
リテイル・フューチャリスト/noteプロデューサー
大手百貨店入社後、ベンチャー企業を経て2017年独立。ニューリテールにまつわるコンサルティングや執筆、コミュニティマネジメント、イベントプロデュースを行う。またnote有料マガジンを通して独自の考察や海外事例の紹介、小売や店舗を軸にしたコミュニティ運営を行う。2019年7月よりnoteプロデューサーに就任。ブランドや店舗オーナーがnoteを通して発信し、顧客とコミュニケーションをとる活動全般を支援する。
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