通る提案には、「理屈」と「感情」の両者が必要

トップのもとには、毎日、数十件の案が上がってきます。それらの膨大な数の案を聞いていると、本当に大阪のためを思って言っているのか、それとも自分の出世や保身のために言っているのかが、だいたいわかるようになってきます。

部長の案であろうが次長の案であろうが、「この人、自分の立場のために言っているな」とか、「どこかの業界団体に頼まれて、言っているんじゃないかな」ということは、なんとなくわかります。

橋下 徹『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』(PHP新書)

僕は、「本当に大阪のことを考えている」と感じられる部下の話は徹底的に聞くと決めていました。

とは言っても、「これは大阪を変えるんです」「日本を変えるんです」と、ひたすら熱い話ばかりされても、困ります。具体的な論理に基づく現実的な実行プランがなければ、学生の夢物語のようになってしまいます。そんなときには、「まず案をもっと固めてください」と言うしかありません。

逆に、理屈や論理一辺倒の比較優位論ばかりでも、「心」は動かされません。つまり、理屈としての「比較優位論」と感情としての「熱い思い」の両者が必要なのです。

企業の場合でも、会社の将来や社会にどう役立っていくのか、さらに言えば、どう地域を変え、どう日本を変えていくのかということを熱く語りながら、その一方で、比較優位の論理できちんと説得していくという、二つの合わせ技が必要です。

これが上司を動かす秘訣なのです。

橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。
(写真=時事通信フォト)
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