逆に企業が避けるべきは、「SDGsウォッシュ」と呼ばれる表面的な活動です。ウォッシュとは、うわべだけをとりつくろうこと。既存の事業をSDGsの目標に紐付けしただけで満足し、SDGsへの貢献を声高に言うような姿勢は、SDGsの達成に何のインパクトももたらさないものとして批判の対象にもなります。

成果目標とその達成度を開示する

SDGsウォッシュの問題は、「一生懸命やっています」「これだけの投資をしています」と言われても、その結果、環境や貧困などの問題がどれだけ改善しているのかが見えないところです。環境問題であれば、CO2をどれだけ削減するか、という目標を設定して、それがどの程度達成されたのかを示すことが重要です。SDGsが採択されてから4年になろうとしている今、取り組む姿勢だけでなく、成果目標とその達成度を開示することが企業には求められているのです。

最後に、SDGsに取り組む先駆的な日本企業を2社紹介します。住友化学は、マラリア対策のための蚊帳をアフリカで提供しています。自社工場の防虫網戸で培った技術を応用し、蚊帳の繊維に殺虫成分を練り込み長期間効果が続くようにした製品です。タンザニアの企業に技術を無償供与して生産し、現地の雇用創出にも寄与しています。16年には、SDGsに貢献する事業を認定する社内制度をスタートさせ、SDGs関連事業の掘り起こし・強化に取り組んでいます。企業のマネジメントにSDGsを取り入れた先進的な取り組みといえます。

大手企業だけではありません。中小企業では、納豆菌から独自に開発した水質浄化剤を使って途上国の水の浄化事業に取り組む日本ポリグルが世界的に知られています。会長の小田兼利氏は、自社の技術が、途上国が抱える課題のソリューションとなることに気づき、販路を開拓していきました。このように、既存の技術がSDGsに貢献できる可能性は十分あります。

「SDGsは企業を必要とし、企業はSDGsを必要とする」――19年3月に開催された経団連の「B20東京サミット」で、SDGsに取り組む先進企業であるユニリーバの前CEO、ポール・ポールマン氏はそう発言しました。その通り、SDGsとビジネスは、切っても切れない関係にあるといえます。ビジネスにSDGsを戦略的に組み込む時代を迎えているのです。

関 正雄(せき・まさお)
明治大学経営学部特任教授・損害保険ジャパン日本興亜 CSR室シニアアドバイザー
1976年、安田火災海上保険(現・損保ジャパン日本興亜)入社。理事・CSR統括部長、損保ジャパン日本興亜環境財団専務理事を経て、2013年より現職。経団連企業行動憲章改定タスクフォース座長。著書に『SDGs経営の時代に求められるCSRとは何か』など。
(構成=増田忠英 写真=AFLO)
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