日テレHDはティップネスを買収したが……

前述したとおり、フジHDのメディア・コンテンツ事業は、グループ全体の約半分の利益しか稼げていないが、裏を返せば、メディア以外の事業が急成長していることを意味する。

フジHDの都市開発・観光事業とは、都市部のオフィスビル賃貸や、リゾートホテルなどを運営するサンケイビルのことである。同社が業績を順調に伸ばした結果、いまやグループ全体の主力事業に育ったのである(図表12)。都市開発・観光事業の営業利益率は、なんと13%を超えている。日テレHD全体の営業利益率11.7%を上回る高さだ。

日テレHDも当然、テレビ事業のみの1本柱だけでは先細りなのはわかっているはずだ。

川口 宏之『いちばんやさしい会計の教本』(インプレス)

だからこそ、全く異業種のスポーツクラブ「ティップネス」を完全子会社にしたり、動画配信サービス「Hulu(フールー)」の日本事業を買収したり、事業の多角化を模索している。

しかし、ティップネスが稼ぐ利益はまだ、グループ全体のたったの2%程度しかない。また、「Hulu」が属する定額制動画配信業界は、Amazon.comやNetflixなど、海外の巨大企業がひしめくレッドオーシャンだ。激しい過当競争が予想されるため、2本目の柱に育つかどうかは未知数だ。

事業の多角化に成功したフジHDと、事業の多角化に苦戦している日テレHD。

日テレHDとしては、視聴率が好調なうちに、第2の柱となる事業を育成することが急務となる。

川口宏之(かわぐち・ひろゆき)
公認会計士
監査法人での会計監査、ベンチャー企業での取締役兼CFOなどを歴任。現在、上場企業の社員研修や各種団体主催の公開セミナーなどで、「会計」をわかりやすく伝える人気講師として活躍中。著書に『決算書を読む技術』『決算書を使う技術』(共にかんき出版)、『いちばんやさしい会計の教本』(インプレス)がある。公式サイト
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