売上構成比に注目!
次に、どのような事業が両社の売上高と営業利益を牽引しているのかを確認しよう。
日テレHDは「メディア・コンテンツ事業」「生活・健康関連事業」「不動産賃貸事業」の3つの事業で構成されており、フジHDは「メディア・コンテンツ事業」「都市開発・観光事業」の2つの事業で構成されている。
日テレHDの構成比としては、売上高も営業利益も、約90%がメディア・コンテンツ事業で稼ぎ出していることが分かる(図表7,8)。やはり、日本テレビを中心とした放送収入がグループ全体の成長を牽引していることがうかがえる。
これに対して、フジHDの構成比を見ると、メディア・コンテンツ事業での稼ぎは、売上高については8割弱であり、営業利益に至っては全体の半分に満たない(図表9,10)。主力のフジテレビが弱体化し、グループ全体を牽引できていない現実が浮き彫りになった。
営業利益の構成比の推移を見ると、6年前は8割以上がメディア・コンテンツ事業で占めていたが、その割合が急速に低下している(図表11)。
本当に強いテレビ局の条件
ここまでの分析から、日テレHDが“勝ち組”、フジHDが“負け組”であることは明白だ。この傾向は今後も続くのだろうか。
確かにテレビの世界においては、日テレの強さが際立っているが、それはあくまでテレビ業界に限っての話である。
インターネットとスマートフォンの普及により、テレビ広告市場は年々右肩下がりで縮小している。5G時代になればこの傾向はますます加速するだろう。
急速に縮小する業界にいつまでもしがみついていては、グループ全体の存続が危ぶまれる。
例えば、かつて写真フィルム業界では、デジカメ普及のあおりで、急速に市場全体が縮小していった。トップ企業のコダックが、事業の転換ができずに経営破綻してしまった一方、同業の富士フィルムは、事業の多角化でヘルスケア事業を育成し、見事に生き延びている。
いまはこの写真フィルム業界と同じことが、テレビ業界にも起きつつあるのではないだろうか。生き残るのは、強い企業ではなく、変化しつづける企業である。