「手術から3カ月ないし半年が経過した平均年齢76歳のアルツハイマー病患者の男性4人と女性9人、合わせて13人を対象に行いました。例えば、75歳女性の場合、視力が右0.3から1.0、左0.2から1.0になりました。見える世界が変わったという心理的効果もあるのでしょうが、私の印象としては脳そのものが喜んでいる感じです」(加治医師)

このことからも、白内障のみならず緑内障や加齢黄斑変性のような目の病気が、認知機能低下の要因になることが推測できる。

一方、過度な目の疲れも体調不良につながっていく。現代人が、そのビジネスシーンで受けるストレスやリスクは、一昔前とは比べものにならないほど高くなっている。日々の仕事でも長時間、パソコンやスマホの画面と向き合う。目の酷使は疲れ目ばかりでなく目の病気まで発症してしまう危険性もある。

症状としては、目が重く、ピントが合わない、涙が出る、目の奥が痛くなるなどがある。さまざまな原因が指摘されているが、ブルーライトもその1つ。これは、パソコンなどの液晶画面から発せられる青い光で、太陽の光にも含まれている。

疲れ目を甘く見てはいけない

「このブルーライトを必要以上に浴びると、目が疲れるだけでなく、体調に悪影響があります。人体はサーカディアンリズムと呼ばれる生理機能で、約24時間周期の体内時計に従って恒常性を維持しています。ところが、夜間や就寝前にパソコンや携帯端末を使いすぎると、このリズムが狂い、体内時計が朝だと判断してしまうのです。そのため眠りにくくなります。そんな状態が長く続けば不眠症になります」

疲れ目と不眠症の関連性をこう説明するのはおおたけ眼科つきみ野医院の綾木雅彦院長。

とはいえ、現在の苛酷なまでの就労環境から逃れることはなかなかむずかしい。人によっては複数のパソコンを使いこなし、社内および社外の人とのコミュニケーションも口頭や電話よりもスマホだ。働いていれば、常にそうしたリスクに自分の目をさらし続けるわけだ。

「疲れ目といっても、決して甘く見てはいけません。サーカディアンリズムが不調になると、海外旅行における時差ボケのように昼夜が逆転した状態になってしまうわけです。起床すれば、自然に分泌されるアドレナリンがなければ活力は出ません。当然、意欲も湧かず、満員電車に揺られて出社しても仕事モードには切り替えられず、上司や同僚から『あいつはヤル気がないな』といった目を向けられることでしょう。サラリーマンにとって致命的なマイナスです」(綾木院長)