知ったかぶりをすると大失敗

経営上、何かをなすためには測定は不可欠である。だが、ただ測定するのでは不十分である。測定方法や、測定方法の導出プロセスの妥当性の確認、データの信頼性の確保や分析するまえのデータノイズの排除、そして、測定したデータの巧みな活用方法などが測定の価値を決定するのである。測定の価値が毀損されると、測定は無力化する。

今後、ビッグデータ分析やAIの活用がますます盛んになるだろう。ただ、どのようなロジックでビッグデータの分析を行っているかという分析のアルゴリズムを理解しておく必要がある。AIについても同様のことが言える。AIの基礎には、私たちの先人たちの叡智の積み重ねがある。

しかし、AIやビッグデータ分析が結論めいたアウトプットをはじき出してくれるからといって、それをうのみにしてはいけない。AIやビッグデータは、そのアルゴリズムを使う人間が熟知し、人が操るものだからである。つまり、どれだけビッグデータ分析やAIの活用が行われるようになっても、人が意図をもって測定方法を選択し、正確に測定し、測定結果を巧みに活用することが大切なのである。

測定、それはとても大切なことなのである。

加登 豊(かと・ゆたか)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
神戸大学名誉教授、博士(経営学)。1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。
(写真=時事通信フォト)
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