6月9日の日経「衆参同日選見送り強まる」が最初

6月初旬までさまざまなメディアが言い立ててきた「衆参同日選」説。7月の参院選に合わせて安倍晋三首相が衆院を解散し、同日選に持ち込むという内容だったが、ここにきて急速に沈静化しつつある。

新聞やテレビは「7月21日、参院選単独で行われる」との見通しを伝えている。ただし、その中でNHKはいまだに「解散見送り」と報じていない。なぜNHKは「それでも同日選の可能性が残っている」とみているのか。その理由を解説しよう。

参院決算委員会で、挙手する安倍晋三首相(右)=6月10日、国会内(写真=時事通信フォト)

同日選見送りの流れをつくったのは6月9日の日経新聞朝刊だ。政界情報は慎重に裏取りしてから報じるという評判の日経が1面で勝負をかけた記事は、それなりにインパクトがあった。ただし見出しは「衆参同日選見送り強まる」。記事の中身も「見送る方向が強まってきた」で、断定はしていない。確信がなさそうにも読める。

確証がなくても後追いするマスコミの横並び意識

朝日、読売、毎日、産経などのライバル紙も一斉に10日夕刊や翌11日朝刊で日経報道を追い掛けた。これで、同日選報道が事実上打ち止めになった形だが、やはりどこかで逃げを打った書きぶりが多い。

全国紙の政治部幹部クラスに事情を聴くと、「7、8割、同日選はないと思っていたところで日経報道が出た。後追いするしかない」「日経報道を受けて追加取材したら、おおむね裏打ちする情報が取れたので追随した」というような回答が帰ってきた。一時と比べると解散風が弱くなっているという共通認識はあるものの、どこの社も絶対の自信は、ないようだ。

日本のメディアは今も、大きなニュースを報じるときは横並び意識が働く。どこかの社が、先んじた報道をすると、確証がなくても後追いすることが少なくない。今回は、その典型例だったのではないか。