各社とも「多分、ないだろう」が前提の苦しい理屈

各紙が報じた「同日選見送り」の記事を読み比べてみる。11日の1面トップで報じた朝日は政権幹部の「同日選が必要だという感じではない」という発言を引用している。産経は同日の1面で与党幹部の「無理をして解散する必要はない」という発言を紹介した。毎日は朝刊1面で、安倍氏が10日の党役員会で、衆院解散に言及しなかったことを指摘。同日選見送りの方向となった根拠のひとつにしている。

しかし朝日や産経が書いたようなコメントを語る政府・与党幹部は解散風が吹き荒れていた頃から、いくらでもいた。安倍氏が、党の会合で衆院解散に触れないのは、いつものことだ。同日選が遠のいた根拠としては弱い。

基本的には日経報道を受け、各社とも「多分、同日選はないだろう」という見通しのもと、苦しい理屈をつけて記事を組み立てた形跡が、うかがえる。

「同日選報道」の火付け役であるNHKが動いていない

新聞、テレビ各紙が「同日選見送り」の確信を持てない最大の理由のひとつに、NHKが「見送り」を明確に伝えていないことにある。

最近のNHKは安倍政権の御用機関などと揶揄されてはいるが、政権の意向を正確に報道していることは間違いない。そのNHKは、5月中旬「衆参同日選の可能性が高まると与野党双方の見方」との報道をし、今回の「同日選報道」をリードしてきた経緯がある。

そのNHKは、6月9日から11日までの間に新聞各紙が行った同日選見送り報道に、付き合っていない。同日選報道の火付け役であるNHKも消火作業に入れば完全に火は消えるのだが、そうなっていないのだ。

15日、そのNHKは「衆参同日選に踏み切らない構えも野党側の動向で最終判断か」と報じた。「見送り」の方向に軸足を移してはいる。ただし「安倍総理大臣は、今後の野党側の動向や19日に開催される党首討論の行方なども見極めながら同日選挙について最終的に判断するものと見られます」と、同日選の可能性を残した内容に止まっている。「火消し」というより「再燃」の余地を残している。