久しぶりに注目を集めた党首討論だったのに

「衆院解散は私の頭の片隅にもありません」。19日の党首討論で安倍晋三首相は、衆参同日選説を一蹴した。これで今春以降、永田町で吹き荒れていた解散風は沈静化することになった。

それにしてもこの日の党首討論は、野党党首たちがハプニング的な解散を恐れて腰が引けている部分が目立った。国会会期末のクライマックスのタイミングで行われた「世紀の凡戦」を、舞台裏を交えて再現してみよう。

安倍晋三首相(中央右)との党首討論に臨む立憲民主党の枝野幸男代表(同左)=6月19日、国会内(写真=時事通信フォト)

党首討論で質問に立ったのは立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の志位和夫委員長、そして日本維新の会の片山虎之助共同代表の4人。持ち時間は枝野氏が20分、玉木氏が14分、志位氏が5分半、片山氏が5分半。合計で45分間という極めて短い時間で行われるので、それぞれに与えられた時間は限られている。しかも安倍氏は聞かれてもいないのに自分の意見をとうとうと述べる傾向の中で、どれだけの成果を上げるか。野党党首の力量が問われた。

最近、党首討論は「歴史的使命を終えた」などと言われることもあったが、今年初めて開かれた19日の党首討論は久しぶりに注目された。「枝野氏か玉木氏が解散を迫るかもしれない。安倍氏はどう答えるか」と、固唾をのんで見守ったのだ。

期待が大きかっただけに失望も大きい「世紀の凡戦」

結果はどうか。自民党ベテラン秘書の発言を引用したい。

「まるでアントニオ猪木対モハメッド・アリの試合みたいだったな」

50代以上の人なら、このたとえ話を理解いただけるのではないだろうか。1976年、当時ボクシング・ヘビー級チャンピオンだったアリ選手と、プロレスラーの猪木選手が東京の日本武道館で戦った。「世紀の一戦」として注目されたが、お互い牽制しあってほとんど攻め合うこともなく判定に持ち込まれてしまった。

この試合は期待が大きかっただけに失望も大きく「世紀の凡戦」と言われた。今回の党首討論が、43年前の試合に似ているというのだ。