見せ場をつくれなかった野党党首3人の体たらく
第1ラウンド。枝野氏は自分の持ち時間のすべてを「年金だけでは2000万円不足」という金融庁審議会の報告書問題に費やした。
「報告書を、存在しないとか受け取らないとかいう弥縫策ではなく、不安を持っている皆さんに正面から向き合うことが政府の姿勢ではないか」と問題提起し、医療、介護、保育、障害などのサービスを受ける際に自己負担を世帯で合算し一定額を超える場合に超過分を国が負担する総合合算制度の導入を訴えたが、安倍氏は真正面から答えることはなかった。
第2ラウンド。玉木氏も年金報告書問題で攻めこもうとしたが、安倍氏を追い詰められなかった。唯一の見せ場は、付箋をたくさんつけた報告書を安倍氏に「読んでください」と言って安倍氏の近くの演台に報告書を置いた時。安倍氏は「私も既に読んでおりますから、もう結構です」と突き返した。玉木氏は、今度は報告書を麻生太郎副総理兼財務相に渡そうとしたが、こちらも受け取らなかった。
第3ラウンドは志位氏。志位氏は、社会情勢の変化にあわせて年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」をやめるように提言。これに対し安倍氏は「マクロ経済スライドをやめてしまうのは、ばかげた案だ」と切り捨てた。
この段階で残る質問者は片山氏1人。時間は5分半。多くの人は「事実上、党首討論が終わった」と思ったことだろう。
「解散論争」から逃げた野党党首たち
枝野、玉木、志位の3氏の質問で最も大きなニュースは、3人が発言した内容ではなく「衆院解散に触れなかった」ということだ。
可能性は少なくなっていたとはいえ衆院解散、衆参同日選の可能性は19日の段階で消えていなかった。野党党首としてはこの点を質問して当然。本音はどうであれ「衆院解散すべきだ」と斬り込むのが野党党首の役割だったし、周囲もそれを期待していた。
今回の党首討論では「2000万円報告書」と、それに端を発する年金問題という大きなテーマがあったのは確かだ。しかし、質問時間のうち2、3分割いて解散の意思をただすことはできたはず。比較的質問時間が多く与えられていた枝野、玉木の両氏は「解散論争から逃げた」と言われても仕方ない。まさに攻め込むことなくゴングを聞いた「猪木対アリ戦」のようだ。