教えることで大きな学びが得られる

こうした「教える」機会は、自分自身の「学び」につながります。LIRではこの効果を促進する仕組みも用意しています。

LIRに参加する執行役員にとってユニークな経験となるそのプログラムは、「リバース・メンタリング」(逆メンタリング)です。つまり、部下側が上司のメンター(相談役)を務めるという、通常のメンター制とは逆(リバース)の役割になるプログラムです。

ニューヨークのキャンパスでは、上級幹部対象のコースから若手対象のものまで、同時に複数の研修が開催されています。参加している若手リーダーたちは20代から30代前半が主体であり、最新の技術や流行のトレンドに敏感です。一方執行役員は、40代から50代なので、そうしたことには少し疎くなっています。

そこで若手リーダーたちが、執行役員に対して最新技術の動向やトレンドについて「教える」セッションが開かれるのです。

執行役員たちはクロトンビルに「教えに来た」のですが、参加者との対話や質疑応答などを通じて、自分のリーダーシップ・スタイルなどについて深く振り返ることになり、結果として「大きな学び」を得て帰ることになるわけです。

自分自身の成長のために「教える」

このように、さまざまな階層のリーダーと執行役員が互いに教え合い、学び合う仕組みをつくることによって、学習する組織という文化が強化されるという効果が生まれます。

GEの全執行役員がこのLIRを体験した後、さらにこの文化を組織に浸透させるため、その次の階層のシニア・リーダーたちにも同じプログラムが実施されました。

人に何かを教えるということは、最大の学びの機会でもあります。そして人は誰しも必ず、何か教えられることを持っています。

あなた自身の成長のためにも、そして何より部下の成長のためにも「教える」ことを実践してください。

田口 力(たぐち・ちから)
上智大学グローバル教育センター 非常勤講師
1960年、茨城県生まれ。83年早稲田大学卒業。政府系シンクタンク、IT企業の企業内大学にて職能別・階層別研修や幹部育成選抜研修の企画・講師などに従事。2007年GE入社。14年に退社し、TLCOを設立。04年、一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了(MBA)。
(写真=iStock.com)
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