部下に教えられる「専門性」とは
教えるべきことが思い浮かばないときは、「専門性」がヒントになります。
若い人たちに限らず、また洋の東西を問わず、今ほど承認欲求が高まっている時代はありません。実は、この欲求の高まりとともに、人や商品、お店、仕事などを「認める」(評価する)という行為に対する欲求も高まっています。
そして、人が人を認める(評価する)ときの基準は、2010年以降のSNSの広まりによって、従来の「公式な権力」から「専門性」に移っているのです。
部下を持つマネジャーとして、部下と同じベクトルにある技術的専門性で競うことには限界があることは言うまでもありません。人の上に立つ者としては、部下とは異なるベクトルにある専門性によって、部下から評価される必要があるのです。
それはたとえば、業界を超えた幅広い人脈をつくるスキルや、ビジョンを描くリーダーとしての力、異なる意見の中から合意を形成して力を同じ方向に持って行くマネジメント力など、多岐にわたります。
上司が部下と同じような仕事をしていては、組織としての発展は望めません。この当たり前のことに反して、部下と競うようなことをしている上司が実に多くいます。こうした人は、まだプレーヤーだった頃の自分から脱却できていない管理職です。
「部下に何かを教えなくてはならない」というテーマを強制的に自分に課したとき、自分はいったい何(どんな専門性)を教えることができるのか、よく考えてみてください。
そして考えるだけではなく、それを実行してみてください。必ず多くの学びがあるはずです。
「教える」と「学ぶ」リーダー・イン・レジデンス
実際にGE(ゼネラル・エレクトリック)で、執行役員に対して強制的に「教える」ことを実践させた事例があるので紹介しましょう。
2010年から、GEクロトンビルで始められた「リーダー・イン・レジデンス」(LIR)という取り組みがあります。
当時、GEには約190人の本社執行役員がいました。その中から1人ずつ、クロトンビルのニューヨーク・キャンパス(研修所)に1週間泊まり込み、その期間中に開催されている各研修プログラムに登壇するのがLIRです。