例えば16年にヘッドハンティングした津崎宏一氏は、上海駐在時代に知り合った管理分野のスペシャリスト。現在は取締役副社長に就任しています。それまでは若い山根氏が孤軍奮闘していたものの、年長の古参幹部たちに自分の行動の正当性を認めてもらうのに、苦慮することもあったそうです。そこに40代の経験豊富な津崎氏が味方についたおかげで、年配層からの経営陣への信頼をしっかりと獲得できるようになりました。

さらなるサポーターとして獲得したのが、ライフネット生命保険の創業者、出口治明氏です。17年にサンワカンパニーの社外取締役に就任します。

「ライフネットを退任されるというニュースを知ってすぐ、それまで面識ゼロだった出口さんにオファーの手紙を送りました。すると翌々日、ご本人から連絡をいただき、さっそくお会いすることに。『変な会社じゃなければ、先着1社はお受けしようと思っていました』とのことで、就任が決まりました」

グローバル展開の構想は着々と実現

このように若い山根氏は、自分よりも年配で、しかし信頼できるサポーターを社内に加えることで、社内で正当性を勝ち得てきている、と考えられます。おかげでグローバル展開の構想は着々と実現しています。16年、台北にショールームを開設。18年にはアジアの企業で初めてイタリア・ミラノサローネ・アワードを受賞。「次なるターゲットは中国、そして米国です」と山根氏は目を輝かせます。

創業者である山根氏のお父さんは、大活躍する息子のこんな未来をどこまで想像していたのでしょうか。社長であることを語らず、束縛もせず、息子に「知の探索」をさせ続けた父。じつは「自分を超える経営者に育ってほしい」という思いを人知れず秘めていたのではないでしょうか。だとすれば、第二創業を息子に果たさせたお父さんもまた、とてつもない慧眼の持ち主であったのかもしれません。

▼第二創業のポイント:息子に後継ぎと伝えず、ひたすら「知の探索」をさせる

会社概要【サンワカンパニー】
●本社所在地:大阪市北区
●資本金:3億9800万円
●売上高:93億2900万円(前年比106%・2018年9月期)
●従業員数:190名
●沿革:1979年、建築資材の輸入販売業として設立。2000年、建築資材のインターネット通信販売事業を開始。13年、東京証券取引所マザーズに上場。
入山章栄
早稲田大学大学院 経営管理研究科准教授
三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.取得。2008年よりニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールの助教授を務め、13年より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』。
(構成=西川敦子 撮影=福森クニヒロ)
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