人生や仕事を“暴走・逆走”させない日々の暮らし方

その実現のために、経営者は毎日何をすればいいのか。

まず、ごく当たり前のことですが、毎朝、新聞に載る記事やテレビのニュースにしっかり目を通すということです。世の中の大きな動きを見きわめることなしに方向づけを行っても、うまくいくことはありません。「会社」という文字は「社会」という文字の反対ですが、社会の動きに勝てる企業はないのです。

毎日、社会の動きを丹念にとらえて、トレンド・世の中の趨勢を見きわめる。この朝の習慣こそが経営者の目を磨いてくれるのです。ネット上にニュースがあふれる今、新聞やテレビの大きなニュースをきちんとチェックすることを怠ってしまう人も少なくありません。

しかし、多くの有能な経営者はより綿密な取材で正確な記事を書いている既存メディアによる報道を確認する。その「積み重ね」の習慣を、社会の動きを見きわめる大きな原動力としているのです。

また経営者として、「素直になる」ことも大切です。松下電器創業者の松下幸之助さんは「人が成功するために一つだけ資質が必要だとすれば、それは『素直さ』だ」とおっしゃっています。経営者・社長という立場になってなお、素直かつ謙虚になって物事を見ることが大切だと私も考えます。そうした視点がないと、どうしても人間は自分の都合のいいように物事を間違ってしまうのです。

では、素直になるためにはどうしたらいいのか。常に反省する姿勢を持つことです。「自分は素直でないのではないかと」と普段からやや疑いの目を自分に向けて、反省するくらいがちょうどいいのです。「自分は勉強ができる」とほんの少しでもうぬぼれていると、もうそれ以上勉強をしなくなってしまうものです。それと同じように、「自分は素直なほうだ」と思いこんでいると、その「素直さ」が次第に曇り、自分を自分でチェックする機能が年々劣化してしまうのではないでしょうか。これでは、自分の人生や経営を逆走・暴走させてしまいかねません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/baona)
【「資源の最適配分」で大事なのは心から褒める、公私混同しない】

(2)の「資源の最適配分」では、他の人の長所を活かすことと、公私混同しないことがポイントになります。長所を活かすとは具体的にはどういうことを指すのか。例えば、同じ構成員によるチームでも、「各人の長所を活かしてそれを集めたチーム」に対して、「凡庸なところ、ダメなところを寄せ集めたチーム」では、パフォーマンスが違うのは明らかです。プロ野球やJリーグで同じ選手を使っていても、監督が代わればパフォーマンスが変わるのはこのためです。

「監督」は長所を活かすためには、現場で活躍する部下や相手の良いところを見出さなければなりません。それなしでは、長所の活かしようがありません。これができているかどうかの判断ポイントは、「人を心から褒めることができるかどうか」だと私は考えています。

どんなに扱いづらい部下にも必ず良いところがあります。それを素直に認めて褒めることができる人が、他の人の長所を活かすことができる人なのです。

「公私混同をしない」というルールも監督者としては大事なことです。私自身、「部下が同じことをやっても許せるかどうか」という基準を持っています。お金の使い方、人の動かし方、そして時間の使い方などで、部下が同じことをやっても許せることなら、自分もやってよいと判断します。この基準を持たなければ、何事も自分の都合のいいように解釈しがちだからです。