「具体的な目標を立てる」が上手な社長下手な社長
私は、現在、6社の社外役員と5社の顧問をしており、経営の意思決定にしばしば立ち会います。そうした目標設定や意思決定のプロセスでは、経営者や管理職といった「リーダー」の実力が怖いほどに浮き彫りとなるのです。どういうことか、ご説明しましょう。
会社全体の目標を立てる場合も、部門の目標を立てる場合も、そのベースになるのは「目的」です。つまり、組織の存在意義。会社によっては、「ミッション」や「ビジョン」「理念」と呼ぶ場合もあります。
「自社製品を通じて社会に貢献する」
「働く人の身心ともの幸福を実現する」
例に出した「目的」の中身を「ずいぶんぼんやりしている」と感じる方もいるかもしれません。具体性に欠けている、と。でも、具体性は、後述する「目標」の中へ盛り込めばいい。まず目標設定の前に、「目的」を立てることが極めて重要なのです。でも、残念ながらこの目的や使命の大切さがわからず、ないがしろにする経営者や管理職が少なくありません。それではリーダー失格というのが、私の率直な感想です。
大きな方向性である「目的」を設定した後に、それを元にして「目標」を設定にします。こちらは「いつまでに、どういう状態になっているか」といったように具体的であることが求められます。ところが、ダメなリーダーは、肝心要のこの目標がぼやっとしていることがよくあります。
「業界最高水準の品質を目指す」「業界で日本一を目指す」
社外役員・顧問としての活動を含め、私はたくさんの会議に出席します。その時、よく目にするのが、「業界最高水準の品質を目指す」「業界で日本一を目指す」といった威勢のいい表現の経営計画です。私はその際に、必ず「業界最高水準」や「日本一」というのは、具体的にどういう状態になった時にそれをいうのか、と質問します。また、いつまでにそれを実現するのか、その達成度合いを測定するためのKPI(Key Performance Index;具体的な指標)は何か、ということもお尋ねします。
明確なゴールイメージやその到達時期だけでなく、同時に適切な中間指標がないと目標はなかなか達成できないものです。そうでなければ、ただ「頑張る」というのと同じです。上司は「ぜひ頑張ってください」と言い、部下は「はい、頑張ります」と答える。そんな漠然とした、緩い環境では何も前には進みません。