「頑張れ」「頑張ります」の不毛なやりとりを延々と続ける

この目標設定こそリーダーの腕の見せ所です。成功するリーダーは中間目標も含めて、具体化の上手な人であり、リーダーがそうした意識の持ち主であれば、その考え方は自然に部下に浸透するはずです。

「業界最高水準」や「日本一」だけでなく、「目標」設定の際に落とし穴となる「空疎」な言葉は他にもあります。例えば、「○○の仕事の人員の充実を図る」や「教育の強化を促進していく」といったフレーズ。こちらも具体性が完全に抜け落ちています。

具体的に何人をいつまでに増やすのか。どのようにして社員の教育を強化しそのレベルを上げるのか、それをどう測定するのか。具体的なゴールイメージが何なのかを明確にしなければ、「頑張れ」「頑張ります」の不毛なやりとりを延々と続けることになります。

ただ、こうした具体的な目標の設定がない場合でも、最終的な目標は売上高や利益ということになりますから、分かりやすい売上高や利益だけが目標として目立ち、場合によってはそれが「目的化」することになるのです。

そうなると、「3日で120億円の利益を出せ」というような、一時期の東芝のように無理難題を現場や末端に命令するだけの殺伐とした組織になり果ててしまうリスクが高いのです。こうした企業は、働く人の意欲をそぎ、その末路は火を見るより明らかです。

実は、計画や目標の立て方次第で、会社の雰囲気や目指すものが変わります。また、どこまで目標を掘り下げて具体化しているかで、リーダーの実力や、次に説明する論理的思考力が見えてくるのです。適切な「数字」に落とし込んでいるかどうか。そこがポイントです。

論理的思考力のない人にリーダーは務まらない

私は、経営者やリーダーの実力を判断する際に、その組織が大きいか小さいかにかかわらず、そのリーダーが自らの手のひらの上で組織を動かし、把握し、コントロールできているかを見極めます。自分で事業の全体像をきちんと把握し、ガバナンスできているかどうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/stockstudioX)

もちろんリーダーの能力や器量によって、動かせる組織の大きさは違いますが、把握する力やコントロールする能力が一定程度ない人にはリーダーは務まりません。

会社が懸命に経営計画を立てて実行しても、経済事情など外部環境の変化などにより思った通りにいかないことも少なくありません。どんな名経営者でも外部環境の変化をコントロールすることはできません。しかし、リーダーが計画通りにいかない要因をきちんと分析・理解し、その他に想定外の事案やトラブルが起こるのを最小限にすることが重要なのです。

そのためには、前述の「具体化」することとも大いに関連するのですが、リーダーに「論理的思考力」が一定程度以上備わっていることが必要です。