周囲に認められ「上へ上へと押し上げられる人」の共通点
私は社員14人の小さなコンサルティング会社の経営の他に、6社の社外役員と5社の顧問をしています。社外取締役をしている会社の中には、東証1部上場の企業もあります。また講演や研修などで多くの経営者や経営幹部に加え、幹部候補生の社員とも接します。
その際、挨拶をして名刺交換をする。場合によっては少し雑談もします。すると、ふと思うことがあります。「あ、この人は役員になるな」「むむ、この人は社長の器だな」。そして、たいていの場合、不思議とその私の「予言」は的中するのです。
職業柄、人を見るのが趣味みたいなものですから、役員になる人や社長になる人について、徐々に嗅覚が発達したのかもしれません。
【役員になれる人】
では、「役員」になる人はどんな人か。
会社のレベルによって、その基準は異なります。私が関わる会社の場合、従業員数は10数人から数万人まであり、人材の質や厚みはさまざまです。とはいえ、役員になる人は、どの会社でも「他の人よりも優れた何か」を持っているのは確かです。
彼らの共通点のひとつは「ハードワーカーである」ということ。
私が親しくしていただいた、ある大企業の常務は、有名なカリスマ経営者から30代、40代に相当鍛えられたそうです。当時は、夜中に懸案の仕事に関して自宅の電話にかかかってくるのは日常茶飯事で、場合によっては、翌朝までに調べておくようにと非情な命令を下されことも一度や二度ではなかったそうです。
そのカリスマ経営者はとにかく仕事にいちずで、風呂に入っても食事をしていても会社のことをずっと考えているタイプだったため、深夜、本人が風呂から出た直後に電話をしてきたこともあったそうです。この常務は「あの頃、いや応なく鍛えられたことが結果的に今日の自分につながっているのかもしれません」と話してくれました。
私は長時間労働がよいことだとは思いません。ただし、体力のある若い頃に優秀な経営者や先輩、顧客などから鍛えられたり、ハードワークの場を与えられたりする経験はえがたいものです。誰でも体験できることではありません。
ハードワークにより、ビジネスパーソンに必要な「基礎力」である、「思考力」と「実行力」が鍛えられるのは確かです。そうした経験を「やらされる」苦痛ではなく、「やらせてもらえる」糧として生かすことができれば、それはいずれ血肉となり、大きな収穫となるはずです。