創価学会の高齢化で「1人4票」の徹底は難しい

この複雑な制度で同日選を行うことに猛反対しているのが公明党だ。公明党の支持層は創価学会。巨大な集票マシンではあるが、組織が大きいからこそ、指示を末端まで降ろすのは時間がかかる。しかも創価学会員は高齢化が進んでおり、4枚の投票用紙に書く候補者名や政党名を徹底させることは至難の業なのだ。

この危機感が、先に紹介した斉藤氏の発言につながっている。選挙の陣頭指揮を執る幹事長ゆえの焦りもあるのだろう。

ある公明党幹部は「もしも同日選になったら、公明党としては比例区中心の選挙にならざるをえない」とつぶやく。自公両党は連立を組んでから選挙協力を続けている。選挙区は公明党候補が出馬していない所では公明党が自民党候補を支援し、比例区では自民党が公明党を支援する。「選挙区は自民、比例は公明」というバーター協力だ。

「選挙区で自民党の応援はしない」宣言

公明党幹部の「比例区中心の選挙」という話は「選挙区で自民党の応援はしない」宣言とも受け取れる。同日選を翻意させようというブラフの意味合いもあるのだろうが、実際に「4票」の指示を徹底させるのが難しいと判断すれば、自分たちの党を優先して、自民党の応援は後回しにするのは当然。ズバリ言えば、同日選になれば自公選挙協力は崩壊する。

公明党や約700万票の集票力がある。289の衆院の小選挙区単位で2万から3万にあたる。この票が上乗せされないと、選挙区で自民党は大苦戦することになるだろう。

同日選で野党はどうなるか。プレジデントオンライン編集部では「『何でも反対』で支持を失う野党の体たらく」などで、野党の選挙協力が遅々として進まないことを繰り返し指摘してきた。しかし、ここに来て、調整が急ピッチになってきた。共同通信社によると32ある参院1人区のうち27で主要野党の候補者一本化が達成されつつあるという(5月18日現在)。

野党共闘が進み始めた原動力は、明らかに同日選への危機感だ。参院選での調整をほぼ終えた野党は今後、衆院小選挙区の調整を進める。今夏に同日選が行われる場合、完璧な共闘関係が組めるとは思わないが、それなりに形はつくることになりそうだ。安倍氏周辺が意図的に吹かした解散風が、「寝た子を起こした」ような皮肉な展開になりつつある。