菅氏「不信任は解散の大義」発言の真の狙い
菅義偉官房長官が5月17日の記者会見で行った衆院解散を巡る発言が、波紋を広げている。野党が内閣不信任決議案を提出した場合、それが衆院解散の「大義になる」と語ったのだ。解散すると明言したわけではないのだが、永田町では事実上の衆院解散宣言と受け止められ始めた。
一方、20日に発表された1月から3月の国内総生産(GDP)速報値はプラス成長となったものの、勢いを欠く内容。消費税率を上げる環境ではないという空気も強くなっている。10月に予定される消費税増税を凍結し衆院解散、衆参同日選という流れは止まらないのか。
なぜか「仮定の質問には答えられない」を使わなかった
菅氏の問題発言は5月17日午後4時半ごろに飛び出した。
午後の定例記者会見で菅氏は、大卒者の就職率が高くなった話、安倍晋三首相と中国要人との会談の話などに、よどみなく答えていたが、記者から「通常国会の終わりに野党から内閣不信任決議案が提出されるのが慣例になっている。時の政権が国民に信を問うため衆院解散・総選挙を行うのは(決議案提出が)大義になるか」との質問に答える形で「それは当然なるんじゃないですか」と回答した。
この発言に会見場に詰めていた記者団は色めき立った。菅氏といえば、慎重な答弁を繰り返すことで知られている。東京新聞の望月衣塑子記者の執拗な質問に対する木で鼻をくくったような答弁ぶりは、テレビ、雑誌などでも再三報じられている。意に沿わない質問に対しては「そのような批判はあたらない」「承知していません」「関係省庁に聞いてください」などと答えることが多い。
「野党が内閣不信任決議案を出してきた時、解散の大義になり得るか」という質問に対し、いつもの菅氏なら「仮定の質問には答えられない」と答えそうなものだ。もしくは「衆院解散については首相の専管事項です」と逃げる道もある。
しかし「当然なる」とクリアに打ち返した。報道陣も、本来なら真意を尋ねるべきだったが、追加質問は出なかった。記者たちも不意を突かれたのだろう。