今は世界の歴史上最も「若者と子供の世紀」

【原田】世界中で子供・若者たちの感性が似通ってきているということは、日本のアニメ業界にとってすごくチャンスだと思います。純粋に統計の話として、今は世界の歴史上最も「若者と子供の世紀」なんですよ。

【柳川】そうなんですか。

【原田】たとえばアメリカ。白人に限れば高齢化が進んでいますけど、ヒスパニックをはじめとした移民の人たちの平均年齢はとても若い。ヨーロッパも同じ。どの国も基本的に移民は若者であることが多いから。東南アジアは平均年齢20代の国が多い。中国は少子高齢化が進み始めていますけど、それでも絶対数として20代が2億人、10代が1億9000万人もいます。

超高齢化大国の日本にいると感覚が鈍ってしまうんですが、実は今、世界では「若者・子供の世紀」なんです。しかも、彼らの感覚がグローバルで近くなり始めている。

そもそも子供は自国固有の文化にまだ染まりきっていないぶん、異国のカルチャーを難なく受け入れられます。

若者を見ても、スマホを持って、オシャレなカフェで過ごして、というライフスタイルは、世界中どこのエリアでも見られるようになっており、世界中の若者たちの価値観やライフスタイルが本当に均質化してきている。そこに日本のアニメが入り込む余地は大きいんじゃないでしょうか。というか、入り込めないはずがない。

Netflix以降、世界での若者調査が非常にラクになった

【原田】僕は日本のアニメ業界に元気がないとか、制作資金が現場に回っていないという話を聞くたびに腹が立つというか、もったいないなと思うんです。受け手である子供の数が実は世界的に多い今こそ、チャンスと思って頑張ってほしい。日本はテレビアニメに関して、さまざまな経験値や先行者利益があるんですから。BTSができて日本のアニメができていないのは、歯がゆいです。

【柳川】確かにそうですね。子供目線に立ってみれば、日本固有の絵柄や作風はそこまでマイナスにならないのかもしれません。現地のテレビ局で放送するとなると、土地柄・お国柄と合わないみたいな判断をされて、いろいろと難しさがあるんですけど、今は配信で視聴者に届けるといった方法もありますし。

【原田】Netflixが登場してから、世界の若者マーケティング調査が非常に楽になったんです。だって、イタリアへ行っても、フランスへ行っても、イギリスへ行っても、アメリカへ行っても、「『ストレンジャー・シングス』観た?」「観ました。あれ、おもしろいよね」という共通話題ができたから。

あれは日本しか受けないよ、とプロが勝手に判断しようが、テラスハウスは結構世界でも見られていたりもする。

ビジネスの進め方とか座組みの問題をクリアすれば、日本のアニメは、もっと世界に飛び出していけるのでは。それこそ、地球から宇宙へ飛び出した「スタプリ」のように。

今日は本当にありがとうございました。たくさんのチャレンジをしている新シーズンのプリキュアに超期待しています。最後までうちの娘を最高にドキドキさせてください。あと、娘だけでなく、親。特に父親も、ね。

原田曜平(はらだ・ようへい)
サイバーエージェント次世代生活研究所 所長
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』『ヤンキー経済』『これからの中国の話をしよう』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。
柳川あかり(やながわ・あかり)
東映アニメーション プロデューサー
1990年生まれ。2013年慶應義塾大学経済学部卒業、東映アニメーション入社。2018年10月より営業企画本部 第一映像企画部 第一映像企画室プロデューサー。企画・製作に「おしりたんてい」「デジモンユニバース アプリモンスターズ」などがある。
(構成=稲田豊史)
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