日本以外で一番人気なのは「韓国」

【原田】「プリキュア」は世界展開しているんですよね?

【柳川】はい。アジア地域をメインに。

【原田】アジア地域をメインにしているのは、東映アニメーションさんの戦略としてアジアを重点的にやっているからなのか、そもそも西洋圏ではこの作品に市場性がないと判断されているのか、どっちですか。

【柳川】配信は広がってはいますが、国内ではビジネスの核となっているグッズ展開については海外はこれからです。一部、韓国やタイなど、玩具展開も同時にやっている国はありますが、芽が出始めた段階です。まずは作品を見ていただく段階なのかなと思います。

【原田】日本以外で一番人気なのはどこですか。

【柳川】韓国です。

【原田】日本と文化も近いですしね。欧米はミックスカルチャーがすごく進んでいることもあり、BTS(防弾少年団)は初めて白人のティーンの子たちが黄色人種を追っかける現象を生み出したとして注目されています。

「日本の作品はアジアまで」と勝手に決め付けている

【原田】僕は日本のコンテンツ業界全体が、「日本の作品はアジアまでしか浸透しない」と勝手に決め付けて思考停止に陥っている面もあるような気がしてならないんですよ。プリキュアも、日本の女子高生を熱狂させるBTSに負けないくらい韓国の子供たちを熱狂させてほしいし、BTSが白人を熱狂させているのなら、プリキュアにもできる可能性はあるはずです。

少なくとも長年世界で若者を研究している立場からすると、たとえばインドネシア人と日本人の若者の20年前と今とを比べると、間違いなく共通項が増えてきていて、感覚も近くなっています。それは東南アジアという日本と距離の近い国々だけじゃなくて、欧米でも同じ。ここ十数年、世界の若者たちに話を聞いていると、グローバルレベルで若者たちの感性が似通ってきているんです。IT化・SNS化・グローバル化が進展しているのだから、当然のことだと思います。

【柳川】それは、私も感じます。感覚が似ているということに関して言うと、色合いもそうなんですよ。いま、日本のおもちゃ業界では「サプライズトイ」という輸入玩具のジャンルがすごく好調なんですが、今までの日本にはなかった色合いなんです。実は「スタプリ」のデザインも、意図して欧米寄りの色合いを取り入れたりしています。

【原田】はは。サプライズトイは、うちの娘も大好き。この前ニューヨークへ出張に行ったら、いかにもアメリカらしいポップな色合いのサプライズトイが売っていたから娘にお土産で大量に買ってきたの。ところが、帰国してみたら、それは日本の子供たちの間でも既に大人気で、日本でも買えることを知ってがっかりしました。アメリカの子供も日本の子供も感性が本当に近くなっているんだと思います。