ストーリーを伝えるノウハウはテレビにある

――番組では、「自分しか知らないだろう情報」を全国から募集し、取材スタッフが投稿者と一緒にその情報が本当なのかを検証しています。見ていると、情報が本当かどうかよりも、検証する過程と投稿者の情熱に引き込まれました。

実際に取材に行くと、人の思いや営み、それから状況のバカバカしさが映るんです。それは取材に行って掘り起こしていくものだと思います。たとえば、インターネットで本を買っても本は読めますが、本屋さんに行ったほうが楽しいですよね。ネットのほうが効率はいいのですが、足を運んで、直接見ることで、人が感じることがあるのです。

この番組には「ある動物」が出てくるVTRがあります。その動物の映像だけをネットで観ても「へー」となって終わりです。でも、その情報を番組に投稿した方の周りの人間関係と、その映像を撮るまでの状況はストーリーです。そのストーリーを伝えることは、テレビのほうが長けているのではないかと思います。テレビ番組の作り方は「リニア」なんです。物事に対して時間が平行に流れていく。僕らはそうやって番組を作る訓練を何十年も受けてきているので、伝えるノウハウはテレビのほうが圧倒的にあります。

「情報番組ですら、二次情報、三次情報で作っている」と危機感を表す(撮影=小野さやか)

人間は「不確実性」があるものに惹かれる

取材に行くと、いろいろな不確定要素があるんです。これはもう偶然の出会いなんですよね。人間ってそういう不確実性があるもののほうが、最終的には惹かれると思うんですよ。もし競馬の結果が分かっていたら、誰も競馬をやらないですよね。僕は魚釣りが好きなんですけど、絶対釣れるとわかっていたら魚釣りは面白くないんです。

――なぜ不確実性に惹かれるのでしょうか。

たぶん幸せを感じるためには、不確定なうえで、ものを得られる幸せや、偶然、ラッキーへの喜びが大事なのだと思います。人間が作った秩序の中でそれが全部コントロールされているのはストレスだと思うんですよね。生き物として開放されている感じがあるのが、テレビの楽しさだと僕は思いますね。

一方で、僕は「配信の手先」にもなっていて、新しいインターネットプラットフォームを構築する仕事もしています。ネットの側になってみると、どうやってその不確実なニュアンスをネットの中に取り込めるのかを考えるようになりました。