利益を追求するトップ、ノルマしか見えない営業現場

もうひとつ例を挙げよう。

「商品と価格のバランスは適切だと思いますか?」

やはり経営層と営業マンとの間で対照的な回答結果が出たのが、この質問である。回答が「NO」または「どちらとも言えない」の場合は、その理由をあわせて尋ねた。
経営層では「YES」、つまりバランスは適切だと答えた人が42.4%いたのに対して、「NO」は21.3%にとどまり、「どちらとも言えない」は36.3%だった。
他方、営業マンは33.1%が「YES」と答え、「NO」は44.3%。「どちらとも言えない」が22.6%となった。

注目したいのは「NO」の比率の違いである。経営層と営業マンとで倍以上の開きがある。さらに、なぜ「NO」と考えるのかという理由を分析すると、それ以上に深刻なギャップのあることが見て取れた。

たとえば経営層はなぜ「NO」と答えるのか。これはおおむね次の3つのパターンに分類できる。

(1)いまの価格では採算に合わないから
(2)いまの価格は価格競争に巻き込まれた結果であり適正ではないから
(3)下請けであり自社に価格決定権がないから

いずれにしても「適正価格に比べて安すぎる」という前提に立っている。

これに対して、営業マンが「NO」と答える理由を3つに集約すると、次のようになる。

(1)競合他社に比べて高いから
(2)値段で競り負ける案件が多いから
(3)あまり考えたことがない

こちらは「適正価格に比べて高すぎる」という見方である。つまり、完全に視点がズレている。経営側は経営側の視点だけ、営業マンは営業マンの視点だけでものごとを見ている。

こういう回答が出てくる会社では、「指示を下に降ろす」あるいは「情報を上にあげる」といった場面でも、相手の考えを理解せず、一方的に伝えようとしているのではないだろうか。

そこには「営業マンはこう思っているのだから、こういう言い方をすればみんなが理解できるはずだ」、あるいは「社長の視点で考えれば、こういうことを言えばわかってもらえるんじゃないか」という想像力が欠落している。そのため指示が徹底しなかったり、現場の情報がうまく伝わらなかったりするのである。