長い休みで「五月病」の増加が懸念

さらに、保育園や病院、銀行、役所等が長期閉鎖することによる国民生活への影響も無視できない。

まずは、10連休中に働く必要がある労働者の場合でも、子供の預け先が確保できなければ、仕事を休まざるを得ない労働者も出てくる可能性がある。勤務日数が減る非正規労働者の所得が減ることも考慮すれば、10連休が日本経済に及ぼす影響そのものはプラス・マイナス両面あることがわかる。

こうした社会生活への影響として最も懸念されるのは、やはり医療機関が休日になることであろう。患者の中には、人工透析を受けている人や、複数の医療機関を別の日に受診する高齢者に加え、病状が急変する可能性のある患者もいるため、こうした人たちへの対応が喫緊の課題といえよう。

また、新しい生活にようやく慣れた児童や生徒、新入社員等への心理的な影響を懸念する向きもある。ようやく新生活に慣れてきたところに、長い休みにはいることでいわゆる「五月病」が増えるのではないかという心配である。このほか、銀行業務が10日間停止するとなれば、資金繰りへの影響も懸念されよう。

お祝いムードから節約モードへ様変わりの可能性も

昭和天皇の崩御による平成の代替わりでは、国民の間に自粛ムードが漂った。それに対して、退位日を含めて10連休となれば、お祝いムードが盛り上がるといったプラスの側面もある(図表3)。

消費者態度指数~前回は自粛ムード~

逆に、製造業では工場の稼働日数が減ることで生産量が抑制され、その挽回生産が連休前後で補えなければ、10連休によって想定ほど景気が押し上げられない可能性もあるだろう。なぜなら経済(GDP)成長率と鉱工業生産は連動しているためだ(図表4)。

なお、GW明けの5月20日に発表を控える1~3月期のGDP成長率はマイナスになることが予想されることや、10連休でお金を使いすぎた消費者が一気に節約モードへ様変わりする可能性がある点については十分な注意が必要であろう。

鉱工業生産に連動する経済成長率~大幅マイナス成長の可能性~
永濱 利廣(ながはま・としひろ)
第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
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