「ある程度の英語力があれば通用するアジアに対して、一番ハードルが高いのが北米です。常にビジネス思考や運用スタイルが最先端であるため、収益を上げるノウハウを備えているうえで、英語が喋れないと、『ビジネスの対象外』と認識されてしまいます」

結果、「TOEICで高スコアを獲得して赴任したが、現地に行ってみたら思うように話せず、歯が立たなかった」という相談が多数寄せられるという。準備はしたものの、意外に役立たなかった例はほかにもある。

「英会話フレーズ集。丸暗記だと応用が利きづらい」(40代・アメリカ)
「決まった流れを練習するビジネス英会話レッスン。同じシチュエーションに出くわすことがなかった」(30代・シンガポール)

なお、やっておけばよかったと思うことは、「TVの英語放送を聞くこと」(60代・アメリカ)、「英字新聞に目を通す」(50代・オランダ)、「日本の歴史の勉強」(30代・アメリカ)など。意思さえあれば今からでも始められるものが目立った。

一方、事前準備で役立った学習として評価が高かったのは、オンライン英会話だ。

「話題は仕事のことに絞り、毎回同じ内容を繰り返し話す練習によって、即戦力で使える最低限の英語を身につけることができました」(30代・アメリカ)
「ある程度の下地があって、その次のレベルに行くのに非常にいいツール。毎日できて、さらに安価。家族持ちのサラリーマンには助かる存在でした」(40代・アメリカ)

白藤氏は、日本で赴任者の事前教育をする際、アポイントメントの取得法と会議を連絡するフォーマットを徹底的に仕込むという。

「英語は主語のすぐ後に述語がくる言語体系のため、結論を早く求める思考になります。なので日本流の『とりあえず1度会いたい』『いったん集まりましょう』のような連絡ではなく、必ず目的を明瞭に伝える。英語圏の人の合理的思考と、彼らに取り合ってもらえる伝え方を理解することは、英語そのものを覚えることと同じぐらい重要なんです」

海外に行っても、英語が上達しない人の行動

準備をして、いざ現地へ――。しかし、海外にいるだけでは必ずしも英語力は上がらないようだ。

「現地では自分の英語が通じるか、尻込みするもの。そこで駐在仲間とつるんだり、日本語のSNSに興じたり、逃げに走ってしまうと英語は上達しません」(中村氏)

現地では何をすべきか。得策のひとつが、「意識的に日本語から距離を置き、英語に触れる時間を最大限に増やす」である。