自ら売り出せば自分の「価格」を決められる
吉本に関しては単純に断ってる仕事があるってだけで、CMとか講演会とかお金になる仕事はがっつりやってその上がりを渡してるんで、まったくその点は問題ありません。
そもそも仕事量と金額は比例していないので、お金がたくさんもらえる仕事を少なくやるのが最も効率はいいですよね。でもテレビ番組はじめ、仕事のほとんどは相手がギャランティを決めてしまうので、自分ではコントロールできません。
しかし逆に自ら売り出せば、自分のギャラ・価格を好きに決めることができます。たとえば、今日着ている僕のブランドの革ジャンは20万超で売っています。商品が売れなかったら僕の負け。でも、そういうやり方で人を呼び込めるなら、稼ぎとしてはレギュラー番組なんて1本もいらないんです。
自分はそういうゲームの仕方で、「やりたいことだけして食っていこう」と決めたんです。
お笑い事務所に「入る」意義は薄れている
――中田さんが今でも「吉本」の組織人であり続ける意義はなんでしょうか。
これは僕個人というよりもう少し大きな視点から見た話ですけど、今お笑い事務所に“入る”意義はかなり薄れてきていると言わざるを得ないでしょうね。
これだけネットが台頭している今、面白いことをやりたい人はテレビを選ぶ必要がまったくありません。自分の表現を突き詰めたり発表したりしたいなら、SNSで十分です。
そんな中で僕の世代っていうのは、昔ながらのやり方、つまりテレビだけで逃げ切れる世代と、YouTubeをはじめとした新しい場所で生きていく世代との中間にいます。
ある芸人はNYに行き、ある芸人は小説家になり、ある芸人は絵本を書き、僕はビジネスをやっている。そんなふうにみんな散り散りになっているのが僕らの世代で、“ゴールデンの時間帯に冠番組を持つ”というひとつの出世コースがもたらす大きなリターンが失われたことを自覚し、何に価値を見いだして生きていくかをそれぞれ模索しているんです。
とはいえそれは芸人に限った話でなく、現代で働くすべての人に問われていることだと思います。
こういうことを話すと、「中田さんだからビジネスがうまくいっただけでは」と言われることがあります。でもそんなことは全然なくて、自分ではできて当たり前と思っているスキルが、隣村では死ぬほど望まれている能力である可能性は十分あります。例えば、ある業界での人脈は違う業界に行けばありがたがられます。
なので、自分の持っている武器をしっかり分析して、ぜひ皆さんも臆することなくいろんな世界にチャレンジしてほしいと思います。
マスターマインドエンターテイナー/オリエンタルラジオ
1982年生まれ。慶應義塾大学在学中に藤森慎吾とオリエンタルラジオを結成し、2004年にNSC(吉本総合芸能学院)へ。同年、リズムネタ「武勇伝」で『M‐1グランプリ』準決勝に進出して話題となり、2005年に「エンタの神様」(日本テレビ系)などでブレイク。バラエティ番組を中心に活躍する。2016年には音楽ユニットRADIO FISHによる楽曲『PERFECT HUMAN』を大ヒットに導き、NHK紅白歌合戦にも出場。2018年には、自身のオンラインサロン「NKT Online Salon」を開設。アパレルブランド「幸福洗脳」を立ち上げ、経営者としての手腕も注目されている。