仕事と家庭の両立は「無理ゲー」だと気づいた

――RADIO FISHとしてのアーティスト活動や歌手のプロデュースに加え、昨年にはアパレル事業に参入されました(※)。中田さんが芸人以外の仕事を積極的にする理由はなんでしょうか。

※中田さんは2018年秋、「幸福洗脳」というファッションブランドを立ち上げ、“アパレル”という異業種に参入した。

2004年のデビューから15年間ほとんど休みなしで働いて、その間に結婚して子どもができて夫婦の問題にも斬り込みました。そこでようやっと気づいたんです、仕事と家庭の両立は無理ゲーであるということに。

仕事で収益をあげなくちゃいけないけど家庭の時間もおろそかにできない。出世しなきゃ、いい夫でいなきゃ、いいパパでいなきゃ……でもこれら全部が幻想だったことに気がつきました。

だってそんなに稼がなくたって生きていくだけなら今の金額でも十分だし、いい親じゃなくても子どもは育つ。おしゃれで優しくて料理上手で……みたいな“いい夫像”に関しても、世間が作り出したイメージに自分自身を当てはめようとしただけで、僕が目指したいものでもなんでもなかったんです。

そう考えたらもうすでにゲームはクリアしていて、あとは今日1日をどれだけ楽しく過ごせるかという勝負だけなんですよ。だったら、自分が楽しめる仕事をしたいなと思ったんです。

孫正義でもビル・ゲイツでも、人生の時間を2倍にすることはできない。だったら好きでもない場所に1日閉じ込められて莫大なストレスを抱えながら1億円生み出すより、清々しい1日から1円を生み出すほうがよっぽどいいし、楽だと思ったんです。

「清々しい1日から1円を生み出すほうがよっぽどいい」(撮影=尾藤能暢)

3LDKから2LDKのマンションに引っ越した

そんなふうに思考がクリアになったら持ち物もどんどんシンプルになっていて、外出するときはスマホと財布だけ。クローゼットにある洋服も4セットのみ。家も3LDKから2LDKのマンションに引っ越しました。

嫁は最初「3Lないと不安~」とかって言ってましたけど、「ふざけんな、ビッグダディ見てみろよ」って説得して(笑)。結局、2LDKでもまったく問題ありませんでした。

そんな中で今の僕が親しいものを感じるのが、2ちゃんねるを立ち上げたひろゆきさん(西村博之氏)。お金に執着せず、自分の心地よさを大事にして生活するスタンスに共感を覚えるんです。

――最近テレビのお笑い番組に出演されていないのも、「やりたい仕事」にこだわった結果でしょうか。だとすると、所属事務所である「吉本興業」にいづらくなったりしませんか?

お世話になったディレクターさんにお笑い番組の出演を頼まれても断ることもあります。「すいません、ちょっと今はやる気出ないっす」って。