マツコロイドを作ったロボット工学者が、人間と自然な会話をするアンドロイド「エリカ」を開発した。研究室を訪れた堀江貴文氏は「何より、シンプルに、可愛らしい。酔っ払った状態で長時間話していると、口説いてしまうかもしれない」という――。

※本稿は、堀江貴文『僕たちはもう働かなくていい』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

エリカと対面する堀江貴文氏(ERICA:ERATO 石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト)、撮影=小学館写真室

アンドロイドが「人間に関する知識」を与えてくれる

「人と同じ形と知能を持ったロボット」を生みだす──。

現在、世界的にトップレベルの研究で知られるのが、大阪大学教授で、ATR石黒浩特別研究所所長の石黒浩さんだ。

石黒さんの専門は知能情報学。世界的権威のある科学雑誌『Science』の表紙を飾るなど、世界的なロボット工学者としても有名だ。彼は人と関わるロボット、そして外見や動きが人間と違わない「アンドロイド(見た目がより人間に近いヒト型ロボット)」を、1990年代から研究している。

最近、有名になったのが「マツコロイド」だ。

人気タレントのマツコ・デラックスを全身まるまるかたどって、マツコ本人と寸分違わないアンドロイドをつくりあげた。マツコそっくりの福々しい、双子のような姿を、バラエティ番組で見た人も多いだろう。

石黒さんはアンドロイドをつくるようになった理由をこう語っている。

「アンドロイドの研究は、アンドロイドそのものが役に立つというよりも、人間に関する深い知識を与えてくれる。それをアンドロイド以外の量産型ロボットに応用できることが大きなポイントと言えます」

自律型のコミュニケーションができる「ERICA」

人間を知るために、人間の能力をアンドロイドに置き換える技術を研究している。それが、ほかのさまざまなロボットの研究開発にも貢献し、広くロボット技術の進展を底上げするというわけだ。

その石黒さんの最新の研究成果のひとつが、「ERICA(エリカ)」だ。

エリカは、日本社会の課題を解く基礎研究を推進しつつ、新技術の創出を目的とした政府事業のなかで、石黒さんたち関西の研究者が開発したアンドロイドだ。従来のアンドロイドは実在の人物をモデルにしてきたが、エリカは美しい顔が持つさまざまな特徴を総合し、コンピューターグラフィックス合成でその顔がつくられたそうだ。

エリカの特徴は、自律型のコミュニケーションが可能なこと。音声認識、音声合成、動作認識、動作生成の技術を統合して、人間と自然な会話をすることができる。しかも、音声認識の部分には、ビッグデータに基づくディープラーニングの技術が用いられており、多様な発音の音声を認識することが可能となっている。