※写真はイメージです(写真=iStock.com/Milatas)

息子に母親がかけ続けた「魔法の呪文」

そんなIくん一家は、親の声かけも独特だ。あえて「開成に入れるよね」と“プレッシャー”をかけていたというのだ。

「普通は、子供にプレッシャーをかけるのはダメって言われますよね。でも私は子供の『エフィカシー』を高めるためにプレッシャーをかけるのはOKだと思っているんです」

エフィカシーとは、自己効力感などと訳されるが、自分の能力を自分でどう評価しているか、ということ。

「子供のエフィカシーを最大限に上げておくことが大切だと思うのです。だって、自分に十分な能力があると信じていれば、高い目標にも躊躇なくチャレンジできますよね」

結果的に見事トップ中学に合格した今、両親はIくんに「東大に入るのは最低ラインだよね」と言っているそうだ。もしかして合格できるかも、ではなく、「合格するのは確定!」という前提で子供に声かけをして、自分はできると信じさせてやるのだ。

「もちろん、そのために勉強することは必要です。ただ『自分はできる』という気持ちがベースになければ、何事も成功しないと思うんです」

旅行中も帰省時も、1日10分でいいから勉強をする

もうひとつ、一家には、Iくんが小学校に入ってから6年間ずっと守らせた鉄のルールがあるという。それは「勉強を1日も休まない」というものだ。

「お正月や祖父母の家に遊びに行った日はもちろん、旅行中でも勉強は休ませませんでした。とはいえ何時間も勉強しろ、と言っていたわけじゃないんです。1日10分でいいので、とにかく毎日、継続して勉強をさせていました。継続は力なりって言いますよね。まだ今は理解できないかもしれないけれど、継続するということの重さを、いつかわかる日がくると思うんです」

とはいえ、そううまくはいかない。自分からすすんで勉強する小学生はかなりレアであり、それはトップ校にすべて受かったIくんも例外ではなかった。そのため、子供に粘り強く訴えかけたそうだ。

「毎日勉強させる、と決めた以上は、私も1日も休まず『勉強しなさい!』って言い続けました(笑)。いや、言わないでも自分でやるなら私だって言いたくないんです。でも、何しろ本当に机に向かうのが嫌いな子で……」

「勉強しなさい」と言っても、すぐに勉強に取りかかることはなかったそうだ。だから勉強するまで何度でも言う。朝言ってダメなら昼。昼言ってダメなら夕方。夕方言ってダメなら夜。

「もう根比べみたいなもんですよ(笑)。何度も子供に同じことを言うときって、2つコツがあるんです。1つ目は同じ言い方をしないこと、そして2つ目はユーモアを交えて面白くすることです。子供って、毎回同じ言い回しだと、すぐに飽きて聞いてくれなくなるんです。あと子供は面白いことが大好きなので、伝えたいことは楽しく伝える方が効果的です。だから、単純に『勉強しなさい!』と言うより、笑顔で『あれ、勉強したくなっちゃった?』と言ったほうが、その気にさせられました。子供によって反応するパターンがあると思うので、いろいろ試してみてください」