中国の成長率1%の低下は日本を0.2%程度押し下げる

いずれにしても中長期的には中国の成長率の低下は不可避のように思える。金融リスクの低減には、デレバレッジを中長期的に維持する必要があるのだが、2019年はそれを棚上げにして、投資主導で景気下振れ回避を優先しようとしている。デレバレッジの先送りが短期で終結しなければ、そのツケはいずれ成長率の急低下として払われることになろう。

もちろん、日本経済・産業界にとってこれは対岸の火事では済まされない。大和総研の試算によれば、中国の成長率が1%ポイント低下すると、日本の成長率は0.2%程度押し下げられる。中長期的には債務問題のソフトランディングが極めて重要な課題となり、その鍵を握るのはデレバレッジを含む構造改革の推進なのである。

齋藤尚登(さいとう・なおと)
大和総研主席研究員
山一証券経済研究所を経て、1998年大和総研に入社。2003年3月~2010年6月に北京駐在。7年3カ月にわたる北京滞在中は、現地エコノミスト・ストラテジストの交流を積極的に行い、中国経済と株式市場制度などについて情報を発信。帰国後、主任研究員を経て2015年より主席研究員、経済調査部担当部長。平成29年度より財務省財務総合政策研究所中国研究会委員、平成30年度より金融庁中国金融研究会委員を務める。
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