GAFA人気の秘訣は、優れたデザイン性
日本では、戦前から色や形の設計とその他の設計が分けて考えられてきました。その結果、日本におけるデザイナーは、経営の意思決定には参加せず、色や形を考えるという限定された役割を担うようになってきたのです。
結果として、多くの日本企業では、技術やコストの観点だけで経営の意思決定が行われてきました。かつてのように、日本の技術が優れていて簡単には追いつかれなかった時代は、それでも問題はありませんでした。しかし現在では、技術だけではすぐに他企業に追いつかれてしまう危険性があります。
日本ではずっと、「イノベーション」=「技術革新」と捉えられてきましたが、ここへきてようやく、イノベーションとは新しい技術を開発することではないと理解されるようになってきました。イノベーションとは「新結合」、つまり、新しい組み合わせを考えることです。イノベーションの本来の意味が理解されるようになったことで、本来の意味でのデザインの重要性が見直されるようになってきたのです。
現在、最も成功しているといわれるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、いずれも利用者が増えるほど価値が高まる「ネットワーク効果」によって巨大企業に成長しました。そのネットワーク効果を支えているのは、ユーザーインターフェースなどのデザインです。ネットワーク効果を高めるには、最新技術よりも、ユーザーとの接点が優れていることが重要なのです。こうした例を見ても、技術がかつてほど競争力を持たなくなってきていることがわかります。
日本企業も徐々に美意識重視へ
日本では、デザイナーが経営に参画する企業は多くありません。その根源的な理由は、先述の通り、デザインを「意匠」という狭義の意味に限定してしまったからだと思います。
近代以前の日本は、非常に優れたデザインの国でした。しかし、明治維新以降の近代化の歴史の中で、西洋に追いつくために技術が重視されるようになります。その過程で、人材面でも技術者が重用されるようになり、教育では理工学系が重視される体制ができたのでしょう。技術者には修士・博士を持っている人が多く、経営者になる人も少なくありません。一方、デザイナーで修士・博士を持っている人は少ないですし、経営者に登用されるケースもまれです。結果として、デザインに弱い企業になってしまっているのです。