「調査結果を見て感じるのは、女性のほうが個人を見てほしい、きちんと評価してほしいという傾向が強いこと。そして、全般的に男性よりも上司に対する要求が高いことですね。背景には、女性活躍社会と言いながらも、まだまだ女性管理職が多くはないこともあって、だからこそある意味上司に理想を求めすぎる傾向があるのかなと思います。また、女性は言葉やちょっとした態度の変化にも敏感ですから、女性部下を多く持つ上司は誰に対しても平等に接するなどの注意が必要だと思いますね」(小宮氏)

一方で、「『あなたからは言われたくないと感じる上司』の特徴」としては、女性は「部下の状況について、細かいところまで把握・理解してくれない」が男性より顕著に高い。小宮氏の指摘通り、女性部下については男性以上に仕事をよく見ること、認めることが重要と言えそうだ。

男性部下にも女性同様の配慮を

では、具体的にどのように部下とコミュニケーションを取ったり、叱ったり褒めたりすればいいのだろうか。

「まずは、人間としての基本ですが、挨拶から始めましょう。コミュニケーションというのは、意味と意識の両方が大事です。『この仕事をお願いできる?』という一言にしたって、誰から言われるかによって部下の受け止め方は変わります。信頼も尊敬もできない人から言われてもやる気を出して取り組もうとはしてくれないでしょう。その人間関係は、普段から挨拶したり、一緒にランチに行ったり、ときには飲みに行ったりという日ごろの会話が大事なんです」(小宮氏)

まずは日常的なコミュニケーションを大事にすることから始めるとして、難しいのは「叱り方」だ。部下の誤りを正すとはいうものの、言葉や伝え方を間違えるとそれこそ「パワハラ」となりかねない。

「今の若い人たちは子どもの頃から叱られた経験が少なく、打たれ弱い傾向があります。そんな人たちを大きな声で怒鳴りつけたら、いくらこちらの指摘が正しくても、向こうは萎縮してしまうでしょう。女性部下への接し方と同様、若い男性部下への叱り方も配慮したほうがいいですね。例えば、いきなりダメなところを指摘するのではなく、『君が頑張っているのはわかっている』『ここはできている』と相手を認めるところから始めて、『でもこの部分は少し足りない』と指摘し、こうすればよくなるということを具体的に指示する。このように段階を踏みながら、一つ一つ指摘するといいと思います」(片田氏)

調査でも、「部下を奮い立たせる一言」の実体験として、片田氏の言う「頑張っているのはわかっている」という言葉が入っていた。ほかにも「普段はできてるのに」という言葉もあり、叱る前に相手のいつもの仕事を認めるようなワンクッションがあると、部下側も指摘を素直に受け入れやすいようだ。さらに「できると思っているから言う」「こんなものじゃないでしょ?」というような期待感を込めた言葉のほか、みんなの前で「君に任せる」と言うなど、部下を信頼し、能力を認めるような発言がやはりモチベーションアップになるようだ。

また、「申し訳ない。ここから頑張っていこう」などと、まずは自分の非を素直に認める発言をすると部下からの信頼につながる傾向がある。